『BEST OF BALLADS』(ベスト・オブ・バラッズ)は、日本のロックバンド・男闘呼組が1992年12月2日にBMGビクターからリリースした初のベスト・アルバムである。男闘呼組のバラード曲を中心に選曲されており、バンドのメロディアスな側面を提示する作品となっている。
概要
『BEST OF BALLADS』は、男闘呼組にとって初のベスト・アルバムであり、そのタイトルが示す通り、キャリアの中からバラード曲やミディアム・テンポの楽曲を選りすぐって収録したコンピレーション・アルバムである 。1992年12月2日にBMGビクターよりCD(品番:BVCR-110)として発売された 。
オリコン週間アルバムチャートにおいては、最高位23位を記録し、チャートには2週間登場した 。これは、それまでのオリジナルアルバム『男闘呼組』(最高2位)、『男闘呼組二枚目』(最高2位)、『参』(最高1位)と比較すると控えめなチャートアクションであったが 、バンドの異なる音楽性、すなわちハードロックだけでなく、叙情的なバラードも得意とすることを示す重要な作品となった。
初回限定盤はデジパック仕様で、特典としてライブ音源3曲を収録した8cm CDが付属していた 。また、アルバムパッケージに使用されている様々な風景写真は、メンバーの岡本健一が撮影したものである 。
収録曲
Disc 1
- Midnight Train
- LONELY…
- 秋 -It’s a ballad-
- 不良
- CROSS TO YOU -雨-
「参」に収録されているより演奏時間が少し長くなっている。 - 別離のハイウェイ
- 追憶の挽歌
- FOREVER
- -M-
- Resistance
- 狂おしく むなしく
表記は無いがイントロ・アウトロを編集した未発表バージョン。 - 雨に抱かれて
表記は無いがイントロを少し編集した未発表バージョン。 - STAY WITH ME
表記は無いがイントロを少し編集した未発表バージョン。 - ANGEL
- SO LONG
- MY LIFE
Disc 2 ライブバージョン(初回限定盤のみ)
- インディアンの丘で
- 秋 -It’s a ballad-
- I LOVE YOU
音楽性および制作
本アルバムは、男闘呼組の楽曲の中から特にバラードに焦点を当てて選曲されたコンピレーションである 。デビュー以来、ハードロック色の強い楽曲で人気を博してきた男闘呼組だが 、一方でメロディアスで情感豊かなバラードも数多く制作しており、本作はそうした側面を集約して提示する目的があったと考えられる。CDジャーナルのレビューでは、本作収録のバラード群を「重厚でいい」と評している 。
収録された楽曲は、1988年のデビューシングル「DAYBREAK」のカップリング曲「Midnight Train」 から、1991年発表のアルバム『I’m Waiting 4 You』収録の「Angel」「So Long」 まで、活動初期から中期にかけての楽曲で構成されている。特筆すべきは、シングル表題曲(A面)の収録が「Angel」 のみ(「CROSS TO YOU」 は「-雨-」という表記 で収録)であり、多くがシングルのカップリング曲(B面)やオリジナルアルバム収録曲から選ばれている点である。例えば、「Midnight Train」、「Lonely…」、「秋 -It’s a ballad-」、「My Life」 などがこれにあたる。この選曲方針は、ヒットシングルを集めた一般的なベスト盤とは異なり、バンドの隠れた名曲や、より深く彼らの音楽性を知る上で重要な楽曲を紹介する意図があったことを示唆している。
特に「秋 -It’s a ballad-」の収録は、選曲のコンセプトを象徴している。男闘呼組にはオリコン週間1位を獲得したヒットシングル「秋」 が存在するが、本作にはそのバラード・リアレンジ版である「秋 -It’s a ballad-」(シングル「TIME ZONE」のカップリング曲)が収録された 。これは、バラード集としてのテーマ性を明確にするための意図的な選択であったと考えられる。なお、後に発売されたベスト盤『NEW BEST 男闘呼組』では、収録曲表記が「秋」でありながら実際には「秋 -It’s a ballad-」が収録されているという誤植があったが 、本作では明確にバージョンが区別されている。
音楽的には、男闘呼組のサウンドの特徴であるロックバンド編成(ギター、ベース、ドラム)にキーボードを効果的に加えたアレンジが、バラードという形式の中でよりメロディや歌詞の情感を引き立てるように用いられていると推察される 。成田昭次や高橋和也を中心としたボーカルワークやハーモニーも、バラード曲においてはより繊細さや力強さが際立つ 。成田昭次のソロ楽曲に見られるような、ハードロックを基盤としつつもロマンティックな要素を持つバラードのスタイル は、本アルバムに収録された楽曲群にも通じるものがあるかもしれない。
本作は、既存のスタジオ音源を編集したコンピレーション・アルバムであり、このアルバムのために新たにレコーディングされた楽曲は収録されていない 。初回盤に付属したボーナスディスクも、既存曲のライブ音源である 。制作面では、メンバーの岡本健一が自ら撮影した写真をアルバムのアートワークに使用しており 、単なるレコード会社主導の企画盤ではない、バンド自身の意向やアート性が反映された作品となっている。
参加ミュージシャン
前田耕陽 – ボーカル、キーボード
成田昭次 – ボーカル、ギター
高橋一也 – ボーカル、ベース
岡本健一 – ボーカル、ギター
江口信夫 – ドラム
小関純匡 – ドラム
馬飼野康二 – キーボード
田中厚 – キーボード
戸塚修 – キーボード