作:斎藤憐 演出:丹野郁弓
『グレイクリスマス』(2022年版)は、劇作家・斎藤憐の同名舞台作品を劇団民藝が2022年3月から6月にかけて全国で巡演した公演である。演出は丹野郁弓が引き続き担当し、客演として岡本健一が権堂役で出演した。
					初演
					
 					
			
						劇団民藝公演「グレイクリスマス」2018
						『グレイクリスマス』(ぐれいくりすます)は、劇作家・斎藤憐による日本の舞台作品。1945年の敗戦直後から1950年までの5年間を、旧華族・五條伯爵家で迎えるクリスマス…					
				
2022年版は新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越え、2020年版からの全国巡演体制をさらに推進した公演である。3月から6月にかけて、関越地方、静岡県、麻生市、九州地方など複数地域での巡演が実施された。
演出家・丹野郁弓は、作品の持つ戦後日本の民主主義と価値観の変容というテーマを引き続き深堀りし、群像劇としての多層性を強調した舞台に仕上げた。パンデミック下での制限が緩和されつつある社会情勢に対応し、舞台表現においてもより動的な演出が試みられた。
主なキャスト
- 五條伯爵:千葉茂則
 - 伯爵夫人・華子:中地美佐子(前作から継続)
 - ジョージ・イトウ(日系二世の軍人):塩田泰久
 - 権堂(闇屋):岡本健一(客演)
 - 伯爵令嬢・雅子:神保有輝美
 - 伯爵嫡男・紘一:岩谷優志
 - 伯爵の弟・紀孝:天津民生
 - 紀孝の妻・慶子:吉田陽子
 
岡本健一は前作につづき権堂役を務め、激動期を生きる在日コリアンの青年を迫真の演技で描いた。

上演
3月31日 本庄市民文化会館〜
6月24日 佐世保 アルカスSASEBO 大ホールまで
全国各地51回公演
2020年版のCOVID-19による公演制限を経て、2022年版は社会の通常運転への回復期に上演された意義が大きい。作品のテーマである戦後民主主義の理想と現実の葛藤は令和の時代にも共振し、演出はより観客との対話を意識したものになった。
岡本健一の演じる権堂は、権力や差別の構造に翻弄される若者の複雑な心理と社会的背景がより深く表現され、批評家や観客から高い評価を得た。中地美佐子の華子役も一貫して作品の精神性を体現し、多世代にわたる役者陣の連携によって重厚な舞台となった。







