テレビ朝日「泣くな研修医」

『泣くな研修医』(なくなけんしゅうい)は、高橋和也が消化器外科副部長役で出演したテレビドラマ。現役外科医・中山祐次郎の同名小説を原作とし、2021年4月24日から6月26日までテレビ朝日系「土曜ナイトドラマ」枠で放送された。地方の大学医学部を卒業した研修医が、無力感に打ちのめされながらも成長していく姿を描いた青春群像劇である。

概要

舞台は都内の総合病院・牛ノ町総合病院の外科で、地方大学出身の研修医・雨野隆治(白濱亜嵐)が一人前の医師を目指し奮闘する物語である。隆治を含む研修医4人は知識も経験も乏しく、救えない患者を前に無力さに打ちのめされながらも葛藤を乗り越えて成長していく。指導医の佐藤玲(木南晴夏)や消化器外科副部長の岩井智也(高橋和也)ら先輩医師たちは研修医に厳しく接するが、その裏には若手を育てる思いも描かれている。タイトルの「泣くな研修医」が示すように、本作では困難に直面して涙しそうになる研修医たちが、それでも立ち上がって前進する姿が描かれている。

本作はテレビ朝日の深夜ドラマ枠「土曜ナイトドラマ」で全10話が放送された。主演の白濱亜嵐にとっては連続ドラマ初主演作であり、劇中ではEXILE/GENERATIONS from EXILE TRIBEのパフォーマーである白濱が初めて医師役に挑戦している。最終話放送後には、視聴者から「仕事を頑張ろうと思えた」「続編を希望する」といった反響の声が多く寄せられた。

消化器外科副部長・岩井智也(高橋和也)

あらすじ

研修医の雨野隆治は熱意を胸に東京の牛ノ町総合病院で研修を開始する。しかし理想とは裏腹に現実の研修医生活は過酷で、救急搬送された患者を前に何もできず、器械の準備もままならない隆治は先輩医師たちに叱責される日々を送る。指導担当の消化器外科医・佐藤玲は冷静かつ厳格に研修医を指導し、消化器外科副部長の岩井智也(高橋和也)は天才的な手腕から「手術の鬼」と渾名される腕利きだが、研修医には容赦なく厳しい。しかし隆治たちは様々な患者との出会いを通じて少しずつ成長し、研修医仲間との絆も深めていく。

物語が進む中で研修医たちは初めて担当した手術や終末期患者の死など幾多の困難に直面する。第7話では、担当患者を失い落胆する隆治が岩井に廊下で声を掛けられ、医師としての心得を諭される場面が描かれる。最終話では、岩井の研修医時代の同期だった仲川一貴(谷中敦)という医師が両脚の麻痺を伴う重篤な状態で入院してくる。岩井は隆治に「自分が執刀医だったらどう治療するか答えを考えて来い」と課題を与え、隆治は仲間と協力して治療法を模索する。厳しい岩井の指導を受けながらも、隆治は自ら答えを見出して提案に至り、研修医として大きく成長した姿を見せて物語は結末を迎える。

キャスト

  • 雨野隆治(あめの りゅうじ) – 演:白濱亜嵐
    鹿児島県出身の研修医1年目。情熱的だが不器用で見栄っ張りな性格。幼少期に兄を亡くした経験から医師を志し、「一日も早く一人前の医者になる」ことを目標に研修に励む。
  • 佐藤玲(さとう れい) – 演:木南晴夏
    外科医歴10年目の消化器外科医。隆治たち研修医の指導医で、クールかつ有能な女医。冷静沈着だが皮肉屋であり、研修医には厳しく接し一人前に育てようとしている。
  • 川村蒼(かわむら そう) – 演:野村周平
    隆治の同期研修医。東京の病院経営一家に育ったエリート志向のお坊ちゃん。優秀な兄へのコンプレックスを抱え、地域医療に貢献したいという目標を持つ。
  • 滝谷すばる(たきや すばる) – 演:柄本時生
    隆治の同期研修医。異色の経歴を持ち、一度一般企業で3年間勤務してから医学の道に戻った苦労人。既婚者で子持ち。優しく素直な性格で、データ分析が得意。
  • 中園くるみ(なかぞの くるみ) – 演:恒松祐里
    隆治の同期研修医。幼少期の貧困経験から「金がすべて」「強くなければ生きていけない」という信念を持つ苦学生。外科医志望で要領が良く、年上男性の扱いにも長けている。
  • 鴨下修一(かもした しゅういち) – 演:吉田ウーロン太
    消化器外科医。佐藤玲の同期だが学歴コンプレックスから一方的に彼女をライバル視している。研修医には理不尽な態度をとりがちで、パワハラ気質な一面がある。
  • 岩井智也(いわい ともや) – 演:高橋和也
    消化器外科副部長。手先の器用さで知られる天才外科医で、“手術の鬼”という異名を持つ。研修医たちには非常に厳しく接するが、その指導の裏には時折励まし優しく支える一面も見せる。
  • 藤堂浩司(とうどう こうじ) – 演:山口智充
    放射線科医。関西弁で喋る陽気な中年医師。融通が利かず当日の検査依頼は決して受けない主義だが、人間味のある性格で周囲から愛されている。
  • 吉川文枝(よしかわ ふみえ) – 演:西尾まり
    ベテラン看護師。看護師長目前の立場で、指導に厳しいが面倒見の良い姉御肌。研修医たちにも厳しさと優しさをもって接する。
  • 相沢千夏(あいざわ ちなつ) – 演:奥山かずさ
    若手看護師。ぶっきらぼうな物言いだが仕事は有能でしっかり者。研修医の川村とは密かに交際している。
  • 山下武(やました たけし) – 演:木村昴
    第2話以降に登場する患者の父親。10歳の息子が事故で重傷を負い、取り乱して病院で騒ぎを起こす。隆治に詰め寄る焦燥する父親役で、本作が木村にとって連ドラ初挑戦となった。

高橋和也の役割

本作における高橋和也の役柄・岩井智也は、研修医たちの良き試練の提供者であり、物語の重要なキーパーソンとなっている。岩井は消化器外科の副部長という立場で研修医たちを指導するが、その指導は極めて厳格で容赦がない。当初、隆治ら研修医は岩井の存在に萎縮し、手術の現場でも岩井に無視されてしまうほど萎縮してしまう。第2話では緊急手術の場面で隆治が何もできず空回りした際、岩井は指導医の佐藤とともに彼を一切手助けせず黙殺し、結果的に隆治は手術直後に失神してしまった。このように序盤の岩井は「怖い先輩医師」として研修医に立ちはだかる。

しかし岩井は単なる冷徹な人物ではなく、物語が進むにつれてその人間味や指導者としての情が垣間見えるようになる。第7話では末期患者を看取った後に落ち込む隆治に対し、岩井が廊下で声を掛けて諭す場面が描かれた。このシーンでは、岩井が研修医を突き放すだけでなく精神的にも支えていることが示され、彼の優しさが感じられるエピソードとなっている。高橋和也演じる岩井は厳しい中にも部下思いの「親心」を持つキャラクターとして表現されており、視聴者からも「岩井先生の言葉に救われた」といった反響が見られたという。

最終話では岩井自身に関わるエピソードがクローズアップされる。岩井の研修医時代の同期である仲川一貴(谷中敦)が重い病を患い入院してくると、岩井は主治医として冷静に対応しつつも、隆治に対しては「自分が執刀するつもりで治療法を考えて来い」と課題を課す。この試練は岩井なりの激励であり、隆治は悩み抜いた末に治療法の提案を導き出す。岩井は最終的に隆治の成長を認め、仲川の手術にその提案を活かす道を選んだ。高橋和也はこのクライマックスにおいて、厳格だった岩井が研修医を一人前の医師として送り出そうとする胸熱な瞬間を重厚に演じている。岩井の厳しさと温かさが融合した指導は物語の締めくくりで大きな感動を呼び、視聴者からも岩井のキャラクターに対する高い評価が寄せられた。

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