『ADDICT OF THE TRIP MINDS』(アディクト・オブ・ザ・トリップ・マインズ)は、岡本健一がボーカルとギターを務めたロックバンド、ADDICT OF THE TRIP MINDSの初めてのスタジオ・アルバム。1994年8月25日にポリスターより発表された。本作は、バンド結成から3年足らずでのメジャーレーベルからのリリースであり、岡本の詞世界とバンドの轟音サウンドが融合した作品として位置づけられている。2023年5月21日には、オリジナルからの復刻CDが発売された。

ADDICT OF THE TRIP MINDS(アルバム)
アーティスト:Addict of the trip minds
発売日:1994年8月25日
形態:CD・配信
レーベル:ポリスター
品番:PSCR-5316
収録曲
※全作詞:岡本健一 作曲・編曲:ADDICT OF THE TRIP MINDS
レコーディング
バンドは結成からわずか2年足らずでメジャーレーベルとの契約を獲得した。レコーディングはバンドのライブ感を表現するため、かつての活動拠点であった寺田倉庫を5日間借り切り、歌と演奏を同時に一発録音するという手法が採られた。
レコーディング時期と前後して、1994年1月から3月にかけて、寺田倉庫で「3ヶ月連続ライブ」が開催された。当時、寺田倉庫は倉庫事業から音楽スタジオおよびレストラン事業への転換途上にあり、会場内には積載パレットやリフト車が散見されるという渾然一体とした空間であった。毎回特設ステージが組まれ、回を重ねるごとに動員が増加し、3月のライブでは入場制限がかかるほどの盛況となった。
レコーディング完成後、岡本とバンドメンバーはアムステルダムへ渡航した。フランスからフォトグラファーのJC Polien氏を招致し、8mmフィルムの映像撮影と宣材写真の撮影が行われた。その後、ニューヨークへ飛び、世界的に著名なプロデューサー・ミックスエンジニアのGoh Hotoda氏によるミックスを経て、1994年8月にアルバムがリリースされた。
Goh Hotoda氏は、1987年よりニューヨークを拠点に活動し、マドンナをはじめディペッシュ・モード、坂本龍一などの国内外一流アーティストの作品を手がけており、その手掛けた作品のトータルセールスは5800万枚以上に及んでいた
本作に収録された楽曲の歌詞には、岡本の内面世界が色濃く反映されている。愛することと愛されることへの葛藤、「ここではないどこか」への志向、自由への渴望、そして孤独感といったテーマが、複数の楽曲を通じて繰り返し表現されている。
インタビューの中で、岡本は当時の音楽性について、1991年当時のトランスやレイヴシーン、さらにはアンダーグラウンドの演劇シーンから受けた影響について述べている。岡本によれば、彼は20代前半の段階で、50代や60代になったときにより充実した表現活動を展開することを目指す姿勢を持っていたという。
サウンドと評価
アルバムのサウンドは、ヘヴィでダークなロックベースであり、サイケデリックでカオティックな特性を持つ。川上の弾くヘヴィかつ凶暴なグルーヴが、岡本が創出する世界観をさらに引き立てるという相乗作用が生まれている。
アルバムリリース後、バンドのライブ活動は大型化していった。既に西麻布Yellowではキャパシティをオーバーしていたため、川崎のクラブチッタ、渋谷のON AIRなど、より大規模なライブハウスでの公演が行われるようになった。リリース当時、岡本のクールかつ扇情的なパフォーマンスは、それまでとは異なるオーディエンスを獲得し、多くのミュージシャンから注目を浴びた。本作は、当時の日本のロックシーンに対して一石を投じる作品として機能した。
復刻CD リリース
2023年5月21日、オリジナルアルバムの復刻CD盤がリリースされた。同時に、バンドは新作スタジオアルバム『PARADIGM SHIFT』をリリースしており、本作は再結成後の初のニューアルバムとなった。

