男闘呼組 (アルバム)

『男闘呼組』(おとこぐみ)は、日本のロックバンド、男闘呼組の1枚目のスタジオ・アルバムである。 1988年9月26日に、当時の所属レーベルであったRCA/BMGビクター(現:ソニー・ミュージックレーベルズ)からリリースされた。 アルバムはLP(規格品番:RHL-8488)、CD(規格品番:R32H-1069)、カセットテープ(規格品番:RHT-8488)の3形態で発売された。 本作は、同年8月24日にリリースされ大ヒットを記録したデビューシングル「DAYBREAK」に続く形で発表された。

内容

男闘呼組のデビューアルバム『男闘呼組』は1988年9月26日にRCA/BMGビクターより発売された。オリコン週間2位を記録した本作は、映画『ロックよ、静かに流れよ』挿入歌を含む、ハードロックとポップスを融合したサウンドが特徴。メンバー作曲の楽曲や各々のソロ曲も収録し、バンドとしての多様性と初期の方向性を示した重要な作品である。

本作はデビューアルバムながら商業的に大きな成功を収めた。オリコン週間アルバムチャートでは最高2位を獲得し、1988年度の年間アルバムチャートでは49位にランクインした。 また、オリコンチャートには合計31週にわたってランクインし、ロングセラーとなった。

デビューシングルの未収録

特筆すべき点として、オリコン週間シングルチャートで1位、1988年度年間シングルチャートでも4位を記録したバンドのデビューシングル「DAYBREAK」が、本作には収録されていない。 デビューアルバムに先行ヒットシングルを収録しない構成は、当時の音楽業界の慣例からすると異例であった。これは、シングルとアルバム双方の売上を最大化するための商業的な判断、あるいはアルバムをシングルとは独立した一つの作品として提示したいという制作側の芸術的な意図を反映した可能性がある。「DAYBREAK」の各バージョンに収録されていたカップリング曲(「第二章 追憶の挽歌」、「ロックよ、静かに流れよ~Crossin’ Heart~」、「Midnight Train」、「Stand Out」)も同様に本作には未収録であり、アルバムとシングルは明確に切り離された。 これらのカップリング曲の一部は、後に『NEW BEST 男闘呼組』や『HIT COLLECTION』といったベスト・アルバムに収録されることとなった。

映画との連動

本作は、メンバー自身が主演し、アルバムリリース前の1988年に公開された映画『ロックよ、静かに流れよ』と深い関連性を持っている。 収録曲のうち、「OVERTUREルート・17」と「ROLLIN’ IN THE DARK」の2曲は、同映画の挿入歌として使用されたことが明記されている。 このことから、アルバムは映画のサウンドトラック的な側面も持ち合わせており、映画を通じて形成されたバンドのロック・イメージを音楽面から補強し、相互のプロモーション効果を高める役割を果たしたと考えられる。映画の主題歌であった「ロックよ、静かに流れよ~Crossin’ Heart~」は「DAYBREAK」のカップリング曲であり、本作には収録されていないが、後のベスト盤には収録されている。

収録曲

全10曲収録。各メンバーのソロ曲が1曲ずつ含まれているほか、バンド自身が作曲を手掛けた楽曲も収録されている。

  1. OVERTURE〜ルート・17 (映画「ロックよ、静かに流れよ」挿入曲)
    OVERTURE…作曲・編曲:馬飼野康二
    ルート17…作詞:大津あきら 作曲:高槻真裕 編曲:戸塚修
    成田昭次ソロ
  2. 別離のハイウェイ
    作詞:安藤芳彦 作曲:熊谷安廣 編曲:沢健一
  3. RUN RUNAWAY
    作詞:大津あきら 作曲・編曲:馬飼野康二
  4. KIDS
    作詞:高柳恋 作曲:Michael Brown 編曲:戸塚修
    岡本健一ソロ
  5. この夜にすべてを
    作詞:安藤芳彦 作曲・編曲:馬飼野康二
  6. ROLLIN’ IN THE DARK (映画「ロックよ、静かに流れよ」挿入曲)
    作詞:大津あきら 作曲:男闘呼組 編曲:戸塚修
    成田昭次ソロ
  7. CARRY ON
    作詞:原真弓 作曲:Michael Brown 編曲:井上日徳
    前田耕陽ソロ
  8. 明日への暴走
    作詞:大津あきら 作曲・編曲:馬飼野康二
  9. MEN’S BUGI
    作詞:高橋一也 作曲:男闘呼組 編曲:戸塚修
    高橋一也ソロ
  10. 不良
    作詞:大津あきら 作曲:高槻真裕 編曲:戸塚修
    成田昭次ソロ

音楽性および制作

本作は、男闘呼組がジャニーズ事務所所属のアイドルグループという側面を持ちながらも、本格的なロックバンドとしての方向性を打ち出した初期の作品である。 アルバム全体のサウンドは、1980年代後半のハードロックやポップ・ロックを基調としつつ、メンバーの音楽的ルーツや制作陣の意向を反映した多様な要素が混在している。

サウンドの多様性:ロックとポップスの融合

アルバムには、激しいギターリフを特徴とするハードロック・ナンバー(「ルート・17」、「ROLLIN’ IN THE DARK」など)から、シンセサイザーを多用したポップス寄りの楽曲(「この夜にすべてを」など)、さらにはメンバーのソロ曲に見られるようなロカビリー(「MEN’S BUGI」)、ディスコ/ファンク(「CARRY ON」)といった要素まで、幅広い音楽性が展開されている。 これは、アイドルとしての出自とロックバンドとしての志向という、グループが持つ二面性を音楽的に表現しようとした結果とも考えられる。外部の職業作家によるキャッチーな楽曲と、バンド自身の志向を反映したより硬質な楽曲が共存することで、幅広いリスナー層へのアピールと、バンドとしてのアイデンティティ確立の双方を目指した構成となっている。

ソングライティングとメンバーの個性

デビューアルバムでありながら、収録曲のうち「ROLLIN’ IN THE DARK」と「MEN’S BUGI」はメンバー(男闘呼組)自身が作曲を手掛けており、「MEN’S BUGI」では高橋一也が作詞も担当している。 これは、デビュー当初からメンバー自身が楽曲制作に関与していたことを示しており、後のアルバムで自作曲の比重を高めていくバンドの方向性を予示している。

また、各メンバーにソロ曲が割り当てられている点も本作の特徴である。 成田昭次の「ルート・17」「ROLLIN’ IN THE DARK」「不良」はハードロック/ロックバラード、岡本健一の「KIDS」はUKロックの影響を感じさせるミディアムロック、前田耕陽の「CARRY ON」はダンサブルなシンセポップ、高橋一也の「MEN’S BUGI」は自身のルーツであるロカビリー調と、それぞれの楽曲がメンバーの個性や音楽的嗜好を反映したものとなっている。 これにより、アルバム全体の多様性が増すとともに、各メンバーのアーティストとしての側面が初期段階から提示されている。

アレンジャーによるサウンド形成

本作のサウンドを特徴づける上で、アレンジャー(編曲者)の役割は大きい。特に、馬飼野康二(一部楽曲ではMARK DAVIS名義を使用)と戸塚修が多くの楽曲の編曲を手掛けている。 分析によれば、馬飼野康二が編曲した楽曲(「RUN RUNAWAY」、「この夜にすべてを」、「明日への暴走」など)はシンセサイザーを多用し、ポップス寄りのサウンドプロダクションを持つ傾向がある。 一方、戸塚修が編曲した楽曲(「ルート・17」、「KIDS」、「ROLLIN’ IN THE DARK」、「MEN’S BUGI」、「不良」)は、ギターリフを前面に出したハードロック/ヘヴィメタル色が強いアレンジが施されている。 このように、楽曲の方向性に応じて異なるアレンジャーを起用することで、アルバム内で意図的にサウンドのコントラストを生み出し、前述したロックとポップスの両側面を効果的に表現している。

制作背景

アルバム冒頭を飾る「OVERTURE〜ルート・17」は、馬飼野康二による約1分間のシンセサイザー・インストゥルメンタル「OVERTURE」から、間髪入れずに戸塚修編曲によるヘヴィメタル調の「ルート・17」へと繋がるという、ユニークな構成を持っている。 この構成は後のベスト・アルバム『HIT COLLECTION』にもそのまま収録された。
前田耕陽のソロ曲「CARRY ON」は、バンド本来のロック路線とは異なるダンサブルな楽曲であるが、ライブでは基本的にメンバーは踊らずに演奏に徹していた。 高橋一也のソロ曲「MEN’S BUGI」は、間奏部分を除きロカビリー調のアレンジが施されている。
また、映画『ロックよ、静かに流れよ』の挿入歌が収録されていることから、映画の制作とアルバムの制作がある程度連動して進められていたことがうかがえる。

男闘呼組のデビューアルバムである本作『男闘呼組』は、バンドの初期の音楽的方向性と多様性を示す重要な作品である。ジャニーズ事務所出身という背景を持ちながらも、本格的なロックサウンドを志向し、ハードロックからポップス、ロカビリーまで幅広いジャンルを取り込んだ。映画とのタイアップやメンバー自身の楽曲制作への参加、各メンバーのソロ曲収録などを通じて、バンドとしての多面的な魅力を提示することに成功した。デビューシングルの大ヒットに続き、本作も商業的な成功を収めたことで、男闘呼組は1980年代後半の音楽シーンにおいて確固たる地位を築く礎となった。

参加ミュージシャン

前田耕陽 – ボーカル、キーボード
成田昭次 – ボーカル、ギター
高橋一也 – ボーカル、ベース
岡本健一 – ボーカル、ギター
小関純匡 – ドラム
馬飼野康二 – キーボード
戸塚修 – キーボード
井上日徳 – キーボード

タイトルとURLをコピーしました