元・男闘呼組 岡本健一、舞台に上がる前に思い浮かべる顔とは。「奈良岡朋子さん生前最後の舞台『ラヴ・レターズ』、今までの成長を見せたいと挑んで」 【連載】名優たちの転機・本物の舞台役者になりたくて<後編>(婦人公論.jp)

『婦人公論』2025年3月号を先出しした、関容子の連載「名優たちの転機」第38回の後編です。岡本健一さんが、奈良岡朋子さんとの出会いと共演、舞台に上がる前に思い浮かべる恩人たちを語ります。

10代で『放浪記』を観て森光子さんの楽屋を訪ねた時、日夏京子役の奈良岡朋子さんに何をしている人か尋ねられました。男闘呼組のバンドと舞台の活動を伝えると、奈良岡さんは岡本さんの芝居を観るようになりました。劇団民藝に入りたいと申し出た際は、同世代の劇団員の役を取ってしまうから無理だと言われ、共演できる役者になると決めました。お茶や食事をしながら芝居の話を続け、初めて声をかけてもらったのが2011年の朗読劇『ラヴ・レターズ』でした。

ガーニー作のこの作品は、幼なじみの男女が約半世紀にわたり交わす手紙を読む恋物語です。初めての本読みでは、7歳の少女から年齢を重ねる人物へ鮮明に変わる奈良岡さんに対し、自分の声は届かず、滑舌、ブレス、発声の不足を感じました。本物の舞台役者になりたいと再び稽古を頼み、本番へ進みましたが、最後の手紙で悲しみから1、2分台詞を言えなくなりました。観客も泣いていたものの、終演後は練習不足で役をちゃんと演じていないためだと忠告されました。

2016年には、奈良岡さんの希望で、劇団民藝の『二人だけの芝居―クレアとフェリース―』で共演します。その間の5年間、さまざまな舞台を続け、ほとんどの舞台を観てきた親友から演技の質が変わったと褒められ、すべて奈良岡さんのおかげだと受け止めました。

奈良岡さんの生前最後の舞台となった2022年2月7日の『ラヴ・レターズ』も、本人からもう一度やって終わりにしたいと誘われました。岡本さんは引退しないでほしいと答え、主催のPARCOに劇場の空き日を探してもらいました。本読みではしんどそうだった奈良岡さんが、本番には誰よりも凜として、少女から最期までの声や存在感を示しました。岡本さんは成長を見せたいと思い、最後も泣きすぎず演じ、人間の生きざまや思想、信念を感じ取ったといいます。

作品ごとに良い人と出会ってきた岡本さんは、開演前に目を閉じ、手を合わせ、亡くなった父母、ジャニーさん、メリーさん、恩師の森さんと奈良岡さんの顔を思い浮かべます。会場の全員が事故やけがなく幸せな時間を過ごせるよう見守ってほしいと伝えてから、舞台へ向かうそうです。

名優たちの転機・本物の舞台役者になりたくて

岡本健一

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