30曲の男闘呼組セルフカバーは何を意味するのか:RSC『WARRIORS』と旧カタログ救済の可能性

Rockon Social Clubがニューアルバム『WARRIORS -男闘呼組 SELF COVERS- Rockon Social Club』を発表した。

公式発表によれば、本作には男闘呼組のセルフカバー30曲に、Rockon Social Clubの新曲「The Warriors」と「Love Survivor」を加えた全32曲が収録される。収録曲には「DAYBREAK」「」「不良」「TIME ZONE」「みはり」など、男闘呼組の代表曲や支持の厚い楽曲が多く並ぶ。

同時に公開されたツアーロゴ画像も気になる。天使の上には4つの星があり、その形と並びは、男闘呼組復活期の公式ビジュアルやグッズに使われていた4つ星とよく似ている。

当初、男闘呼組セルフカバー第2弾と聞いて、2023年の『2023』を思い浮かべた人は少なくなかったはずだ。あの作品は、RSCの映像作品『ROCKON SOCIAL CLUB 1988』に付属した特典CDと配信で発表された8曲入りのセルフカバーだった。今回もその延長で、8曲から10曲ほどの再録アルバムになるのではないか、という予想は自然だった。

しかし、発表されたのは30曲だった。

しかも、選曲はかなりヒット曲中心で、Rockon Social Clubアプリ会員から寄せられたリクエストをもとにしたという説明にも納得できる内容になっている。この規模と選曲を見ると、単なる「セルフカバー第2弾」というより、男闘呼組の楽曲カタログを現在のRockon Social Clubで本格的に引き受け直す企画に見えてくる。

2023年の『2023』とは何が違うのか

2023年の『2023』は、かなり実験的な作品だった。

RSCのライブ『ROCKON SOCIAL CLUB 1988』で演奏された男闘呼組楽曲を、スタジオで録音し直したような印象が強く、アレンジも歌割りも原曲から大きく変わっていた。原曲では成田昭次、高橋和也のボーカルが強く印象に残る曲も、RSC版では4人がより平均的に歌う構成になっていた。昭次による歌割り指定があったとも言われており、あの作品は男闘呼組の原曲を忠実に再現するというより、「RSCとして新しく試す」意味合いが強かったように見える。

一方、今回の『WARRIORS』について公式発表は、当時の歌割りやアレンジをできる限り尊重すると説明している。これは大きな違いだ。

自由に作り替えるのではなく、原曲の聴こえ方をなるべく残す。過去をそのまま再現することはできないとしても、現在の声と演奏で、できる限り当時の形を引き受ける。その方針は、単なるカバーアルバムにとどまらない。旧音源を正規に聴くルートがない今、もう一度、公式の入口を作る——そんな意味を帯びてくる。

岡本健一のコメントも、この読みを補強する。ORICONの記事では、今の自分たちで改めて録音すると想像以上にハードだったこと、演奏の中で昔と今、男闘呼組とRockon Social Clubの境界がなくなる瞬間があったことが語られている。今回のカバーアルバムは岡本健一監修でもあり、歌割りやアレンジの尊重は、単なる宣伝文句ではなく、作品設計の中心にあると見てよさそうだ。

2023年8月に解散した男闘呼組の楽曲をRockon Social Clubで、セルフカバーアルバムをリリースするにあたり、100曲を超える中からどの曲をレコーディングするかは、応援してくれているファンの方々に委ねようと思いました。
男闘呼組の曲は全て約30年前の曲になりますが、今の自分達で改めてレコーディングしてみると想像以上にハードでした。
ただひたすらにメンバーの奏でる音に必死になって弾き、歌い、目の前にある曲の世界に入り込んで行くと、昔とか今とか、男闘呼組とかRockon Social Clubとかの境界線も無くなり、演奏する曲の中で様々な物語や情景が浮かび上がる時が、たくさんありました。
どれも名曲ばかりなので、どの曲から聴いても最高ですが、全体を通して聴くと頭の中で壮大なドラマが生まれるような気がします。
Rockon Social Clubのニューアルバムで男闘呼組cover 30曲、楽しみにしていて下さい。

岡本健一(Vo、Gt)

なぜ「救済」に見えるのか

男闘呼組の旧作品は、長く廃盤状態にあり、配信でも聴くことができない。現状、旧音源を正規に聴くルートは基本的に存在しない。合法的に入手しようとすれば中古CDを探すしかないが、復活期には価格が高騰し、その後は海賊版も多く出回った。作品は存在しているのに、正規のルートがない。聴きたくても届かず、曲そのものも宙に浮いたままになる。

そこで今回の30曲再録は、単なる懐古企画ではなく、旧カタログの救済に見えてくる。

もちろん、これは男闘呼組の旧音源を置き換えるものではない。1980年代から1990年代に録音された男闘呼組のオリジナル音源は、いまもそのまま残っている。今回RSCが作るのは、新しく演奏し、新しく録音した別の原盤である。

しかし、今これらの曲に合法的に触れられる入口としては、大きな意味を持つ。旧原盤を動かせないなら、新しく録り直す。オリジナル音源を再発できないなら、本人たちの現在の演奏で、もう一度曲を流通させる。これは「 復刻 」ではないが、復刻が難しい状況で、復刻に近い役割を担う行為だと言える。

音楽権利を素人なりに調べてみると

ここからは、音楽権利に詳しい専門家としての説明ではない。あくまで、今回の発表を受けて、JASRACや著作権情報センターなどの公開情報をできる限り調べ、自分なりに整理した範囲の話になる。契約の実際は外から見えない部分も多く、細部については誤解や不足があるかもしれない。

その前提で見ると、今回の再録がなぜ重要に見えるのかは、少し整理しやすくなる。

音楽の権利は大きく分けて、楽曲そのものの権利と、録音された音源そのものの権利がある。

作詞・作曲された歌詞やメロディは、著作権の領域にある。JASRACやNexToneが管理するのは主にこちらだ。一方、CDや配信で聴いている「その録音」には、レコード製作者や実演家の著作隣接権、いわゆる原盤の権利が関係する。

つまり、同じ「 DAYBREAK 」でも、男闘呼組の当時のCD音源と、RSCが2026年に新しく録音する音源は別物になる。曲は同じでも、録音が違えば原盤は違う。

ライブでカバーする場合は、JASRAC管理曲であれば主催者や会場側の手続きで比較的ルーティン化されている。一方、録音してCDや配信で出す場合は、録音物としての手続きが必要になる。外部作家の曲であれば、作詞家、作曲家、音楽出版社への使用料も発生する。

今回の30曲は、メンバー自作曲だけではない。むしろ、外部作家が関わる楽曲のほうが多い。

収録30曲の作家クレジットを整理すると

では、実際に今回の30曲はどれくらい外部作家が関わっているのか。各曲データをもとに、作詞・作曲のクレジットで整理してみた。

ここでは、作詞・作曲に男闘呼組メンバー以外の名前が入っているものを「外部作家絡み」として数えた。編曲者はこの集計には含めていない。

曲名作詞作曲分類
DAYBREAK大津あきら馬飼野康二外部作家
Stand Out大津あきら馬飼野康二外部作家
ロックよ静かに流れよ〜Crossin’ Heart〜大津あきら馬飼野康二外部作家
第二章 追憶の挽歌安藤芳彦馬飼野康二外部作家
Midnight Train安藤芳彦熊谷安廣外部作家
大津あきら馬飼野康二外部作家
Lonely…大津あきら馬飼野康二外部作家
TIME ZONE大津あきら馬飼野康二外部作家
CROSS TO YOU平井森太郎馬飼野康二外部作家
ROCKIN’ MY SOUL大津あきら馬飼野康二外部作家
DON’T SLEEP大津あきら馬飼野康二外部作家
みんな仲よしKOYOKOYO自作
THURSDAY MORNINGKAZUYAKAZUYA自作
眠りにつく前に岡本健一岡本健一自作
ONE DAY小竹正人成田昭次一部外部
MY LIFE大津あきら馬飼野康二外部作家
CROSS TO YOU-雨-平井森太郎馬飼野康二外部作家
TEARS成田昭次・小竹正人成田昭次一部外部
ルート・17大津あきら高槻真裕外部作家
赤ちょうちんでくらせ高橋一也馬飼野康二一部外部
不良大津あきら高槻真裕外部作家
ROLLING’ IN THE DARK大津あきら男闘呼組一部外部
REIKO高橋一也高橋一也自作
-M-成田昭次成田昭次自作
KIDS高柳恋Michael Brown外部作家
翼なき疾走大津あきら馬飼野康二外部作家
Burn it高柳恋馬飼野康二外部作家
インディアンの丘でKAZUYAKAZUYA自作
みはりシメ中島大矢正浩外部作家
FOREVER前田耕陽馬飼野康二一部外部

この整理では、30曲の内訳は以下のようになる。

つまり、今回の30曲のうち24曲、80%は外部作家が何らかの形で関わっている。これは、メンバー自作曲だけを集めた再録アルバムではない。むしろ、男闘呼組の代表曲やリクエストの多い曲を優先した結果、外部作家曲が多く含まれたと見るほうが自然だ。

前田耕陽の「版権」発言と再録という方法

前田耕陽は過去に、男闘呼組の版権を買い戻すことの難しさについて語っている。一部では、ビートルズの版権を買うくらい難しい、という趣旨の発言として知られている。

ここで言われている「 難しさ 」は、おそらく旧音源そのもの、つまり男闘呼組時代の原盤を動かす難しさだと考えられる。メンバーが歌っていても、メンバーが作った曲であっても、当時の録音を誰が持っているかは別問題になる。旧原盤をそのまま再発・配信するには、原盤権者との交渉が必要になる。

しかし、新しく録り直すなら話は変わる。旧音源を使わず、新しい演奏、新しい録音として出せば、旧原盤の許諾を避けて、新しい原盤を作ることができる。もちろん楽曲側の著作権処理は必要だが、旧音源そのものを動かすよりは現実的な道になる。

この構造は、Taylor Swiftの「Taylor’s Version」と似ている。

Taylor Swiftは、過去の所属レーベル時代のマスター音源を本人が所有していなかったため、自分で過去アルバムを録音し直した。旧音源は配信で聴けたが、その収益や使用許諾を本人が自由にコントロールできないことが問題だった。そこで再録版を作り、ファンがそちらを選んで聴けるようにした。

男闘呼組/RSCの場合は、少し事情が違う。Taylorの旧音源は市場で動いていたが、男闘呼組の旧音源は廃盤・未配信で、正規に聴くルートが基本的にない。Taylorが「 自分の音楽の収益とコントロールを取り戻す 」再録だとすれば、RSCの再録は「 聴けなくなっている楽曲を正規のルートへ戻す 」意味がより強い。

GLAYの例も比較になる。GLAYは自分たちの楽曲をブライダルで使用する際、著作隣接権について使用者から料金を徴収しないと説明している。これは、少なくともその利用形態において、GLAY側が原盤や実演家側の権利をコントロールできる状態を作っていることを示している。権利を自分たち側で管理できれば、ファンが人生の節目で曲を使いやすくすることもできる。

RSCは、旧原盤を買い戻すのではなく、新録で新しい原盤を作る道を選んでいるように見える。これはTaylorやGLAYとは違うが、自分たちの音楽を、自分たちと聴く人の手元へ取り戻すという意味では、同じ方向を向いている。

採算だけでは説明しにくい選曲

今回の選曲は、採算だけでは説明しにくい。

上の表の通り、30曲のうち24曲は外部作家絡みであり、録音物として出せば著作権使用料が発生する。作詞家、作曲家、音楽出版社へ分配される分がある以上、RSCオリジナル曲やメンバー自作曲中心のアルバムより、利益率は下がる可能性がある。

それでも、アプリ会員からのリクエストをもとに、聴きたいと望まれた曲を正面から選んだ。しかも、RSCオリジナルは2曲にとどめ、30曲を男闘呼組カバーにした。ここには、商品として成立させながらも、リクエストを優先しようとする姿勢が見える。

事務所の運営方針への評価は、ここではいったん脇に置く。少なくとも、今回の選曲と再録方針、そして 岡本健一 監修という事実を見る限り、男闘呼組メンバーが楽曲とその記憶をかなり真剣に引き受けようとしていることは伝わってくる。

商業作品である以上、売上やツアーとの連動、新しい原盤資産としての意味は当然ある。だが、それだけならここまで外部作家曲を含む30曲にする必要はない。今回の『 WARRIORS 』は、商業と救済が重なった企画と見るのが自然ではないだろうか。

4つ星と6月30日

もうひとつ気になるのが、同時に発表されたツアーロゴの視覚情報だ。

KURE 5-56 Presents Rockon Social Club Tour 2026 WARRIORS 』のロゴには、天使の上に4つの星が置かれている。この星は、男闘呼組復活期の公式サイトやグッズに使われていた4つ星と形や並びがよく似ている。Xでも、みんながすぐに「 男闘呼組復活の時の星 」と反応していた。

RSC WARRIORS ツアーLOGO
男闘呼組公式サイトより

また、発表日が6月30日だったことも象徴的だ。男闘呼組が1993年に活動休止した日も6月30日とされている。同じ日に、男闘呼組の30曲セルフカバー第2弾を発表した。この重なりも偶然とは考えにくい。

言葉で多くを説明しなくても、視覚と日付で伝わるものがある。今回の発表には、アルバムタイトルの「 男闘呼組 SELF COVERS 」、原曲を尊重する再録方針、4つ星のロゴ、6月30日という日付が重なっている。

これは復刻ではなく、現在の身体での再提示

WARRIORS -男闘呼組 SELF COVERS- Rockon Social Club 』は、男闘呼組の旧音源をそのまま復刻する作品ではない。

しかし、旧音源の正規ルートが基本的に存在しない今、RSCが30曲を新しく録音し、当時の歌割りやアレンジを尊重して届けようとしていることには、復刻に近い役割がある。

さらに、30年以上、曲によっては40年近い時間を経て、完全なオリジナルメンバーでこれだけの規模のセルフカバーを作れること自体、かなり稀なことだと思う。

ソロアーティストが過去曲を再録する例はある。現役バンドが周年企画で代表曲を録り直すこともある。だが、長い空白期間を経たグループが、当時の主要メンバーを欠くことなく再び集まり、しかも旧カタログの正規ルートがほぼ存在しない状況で、代表曲を30曲規模で録り直す例はそう多くない。

単に「 懐かしい曲をもう一度やる 」という話ではない。声も演奏も年齢も変わった現在のメンバーが、当時の楽曲にもう一度向き合い、その形をできる限り尊重しながら、今の作品として残す。ここにも『 WARRIORS 』の特別さがある。

2023年の『 2023 』が、RSCとして男闘呼組楽曲を新しく試す第一歩だったとすれば、2026年の『 WARRIORS 』は、男闘呼組の曲をRSCの現在のカタログへ本格的に移す試みだと言える。

旧原盤を救えないなら、曲を救う。
男闘呼組名義を恒常的に動かせないなら、Rockon Social Clubが引き受ける。

30曲という規模、ヒット曲中心の選曲、原曲尊重の方針、4つ星のロゴ、6月30日という日付。これらを並べて見ると、『 WARRIORS 』は単なるセルフカバー第2弾ではなく、男闘呼組の楽曲を現在へ戻すための本格的なプロジェクトに見えてくる。


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