OVER LIFE

『OVER LIFE』 は、成田昭次のソロ名義として2007年11月28日にリリースされたアコースティック・アルバムである(品番:SESN-1002)。Shining Entertainmentより発売。

概要

男闘呼組として1988年にデビューし、その後、INORGANIC、What’s、Snagなど様々な音楽活動を経てきた成田昭次が、自身の生き様を赤裸々に描いた作品。2006年からギター1本による弾き語りライブを開始し、1年半の間に作りためた楽曲からセレクトされた本作は、成田にとって初のスタジオ録音による完全アコースティックアルバムとなる。

打楽器を一切使用せず、アコースティックギターとボーカルのみで構成されたサウンドは、極めてシンプルでありながらも、深い情念とシニカルなグルーヴを内包。剥き出しの感情や生きることへの葛藤を通して、彼の“inner world”が音として立ち現れる。

収録曲

※全作詞・作曲:成田昭次

  1. Home Town
    現実と夢の狭間をさまようような浮遊感ある詞世界。シニカルで遊び心のある英語混じりの歌詞が印象的で、彷徨い続ける旅人の姿を描く。
  2. Rose Hip
    繊細で痛みを伴う片思いの情景を、バラの実(ローズヒップ)に託して歌うラブソング。曲中の繰り返しが感情の揺れを強調する。
  3. ハニーディップ
    労働と愛を結びつける社会派ロックナンバー。泥にまみれながらも前向きに生きる労働者への讃歌であり、真っすぐな愛の形も同時に描かれる。
  4. Rainy Mary
    雨の夜、幻と語り合うような孤独な男の内面を描く。崩れそうな精神状態のなか、それでも愛を信じ続ける姿が痛々しくも美しい。
  5. 愛してる
    「愛してる」というたった一言に全てを込めるストレートなラブソング。シンプルな構成の中に、強い覚悟と誠実さがにじむ。
  6. One by One
    官能的かつ親密な夜を描いた楽曲。愛の瞬間瞬間を「One by One」と捉え、人生の特別な一夜を肯定的に歌う。
  7. ロディオ・ガール
    魂の荒馬のような自己を乗りこなしてくれる“彼女”を求める奔放な曲。激情と救いを交差させたような歌詞が特徴的。
  8. Strange
    弱さと救済、再生への願望を綴った自己告白的ナンバー。他者との関わりによって“もっと人を愛していい”と気づくプロセスが描かれる。
  9. イマジネーション
    “夢だけで生きていけるのに”というフレーズに象徴される、現実逃避と創造の狭間に揺れる精神の独白。幻想と真実の境界を問いかける。
  10. スローハンド
    “崖っぷちの食卓でティータイム”というユニークな表現に象徴される、静かだが情熱的な愛の表現。どこか諦観を帯びた幸福の讃歌。
  11. Begin to run
    怒りや憎しみを捨て、地図も持たずに走り出す決意を歌った締めくくりの楽曲。人生の再スタート、“現在”を信じる力強いエンディング。

音楽性

『OVER LIFE』は、成田昭次というミュージシャンの核を剥き出しにした作品であり、その音は徹底して「削ぎ落とされた」表現を志向している。打楽器や装飾音がないことで、1曲1曲の言葉とストロークがリスナーの心にダイレクトに響く。

歌詞においては、自己告白的でありながらも、寓話的な要素や比喩も巧みに使われ、詩的な完成度も高い。社会、恋愛、孤独、再生といったテーマを貫くその筆致は、派手さはないが、聴く者の深層心理に語りかける力を持っている。

特に「ハニーディップ」や「ロディオ・ガール」では、生きることへの欲望と泥臭さを真正面から描きつつ、「Rainy Mary」や「Strange」では、脆く壊れそうな精神のゆらぎが音に結びついている。

成田昭次のキャリアにおける重要な転換点であり、アコースティックという手法を通じて、もっともリアルな「声」を記録した作品といえるだろう。

リリース情報

  • 発売日:2007年11月28日
  • レーベル:Shining Entertainment
  • 品番:SESN-1002
  • 形式:CD

 

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