男闘呼組(アルバム)

『男闘呼組』(おとこぐみ)は、日本のロックバンド、男闘呼組が1988年9月26日にBMGビクターからリリースした1枚目のスタジオ・アルバムである。

男闘呼組(アルバム)

アーティスト:男闘呼組
発売日:1988年9月26日
形態:LPレコード・カセットテープ・CD
レーベル:BMGビクター / RCA
品番:
RHL-8488 (LP)
B10T-34 (CT)
R32H-1069 (CD)

1988年8月発売のデビューシングル「DAYBREAK」の大ヒットから約1か月後にリリースされた初のスタジオ・アルバム。本作は、60万枚を超えるセールスを記録した先行シングル「DAYBREAK」を収録せず、よりハードなロックサウンドを前面に押し出す構成となっている。これは、単なるアイドルグループではない「ロックバンド」としてのアイデンティティを明確に打ち出すための戦略的な判断であった。

アルバムはオリコン週間チャートで最高2位を記録し、31週にわたってチャートインするロングセラーとなった。メンバー自身が作曲を手掛けた楽曲も2曲収録されており、パフォーマーとしてだけでなくクリエイターとしてのバンドの方向性を示唆する作品となった。

目次

収録曲

  1. OVERTUREルート・17
    OVERTURE…作曲・編曲:馬飼野康二
    ルート17…作詞:大津あきら 作曲:高槻真裕 編曲:戸塚修
    成田昭次ソロ
  2. 別離のハイウェイ
    作詞:安藤芳彦 作曲:熊谷安廣 編曲:沢健一
  3. RUN RUNAWAY
    作詞:大津あきら 作曲・編曲:馬飼野康二
  4. KIDS
    作詞:高柳恋 作曲:Michael Brown 編曲:戸塚修
    岡本健一ソロ
  5. この夜にすべてを
    作詞:安藤芳彦 作曲・編曲:馬飼野康二
  6. ROLLIN’ IN THE DARK
    作詞:大津あきら 作曲:男闘呼組 編曲:戸塚修
    成田昭次ソロ(映画「ロックよ、静かに流れよ」挿入曲)
  7. Carry On
    作詞:原真弓 作曲:Michael Brown 編曲:井上日徳
    前田耕陽ソロ
  8. 明日への暴走
    作詞:大津あきら 作曲・編曲:馬飼野康二
  9. MEN’S BUGI
    作詞:高橋一也 作曲:男闘呼組 編曲:戸塚修
    高橋一也ソロ
  10. 不良
    作詞:大津あきら 作曲:高槻真裕 編曲:戸塚修
    成田昭次ソロ(映画「ロックよ、静かに流れよ」挿入曲)

制作

制作当時、日本の音楽業界は光GENJIに代表されるアイドル全盛期であり、同じジャニーズ事務所から本格的なロックバンドとしてデビューした男闘呼組は異色の存在だった。本作の制作には、作詞家の大津あきら、作曲家・編曲家の馬飼野康二(MARK DAVIS名義)、編曲家の戸塚修といった、歌謡曲からロックまで幅広く手掛ける作家陣が起用された。

音楽性

本作のサウンドは、編曲家によって大きく二つのアプローチに分けられ、アルバム全体の音楽的な特徴となっている。

戸塚修によるハードロックサウンド:戸塚が編曲を手掛けた「ルート・17」「KIDS」「ROLLIN’ IN THE DARK」などでは、1980年代後半のハードロックやヘヴィメタルの様式が色濃く反映されている。歪んだギターリフと重厚なリズムセクションを主体としたアレンジは、バンドに本格派ロックバンドとしての説得力をもたらした。

馬飼野康二によるポップアプローチ:馬飼野が編曲した「RUN RUNAWAY」「この夜にすべてを」などでは、シンセサイザーを多用したポップス寄りの洗練されたサウンドが特徴となっている。キャッチーなメロディラインと歌謡曲的なコード進行は、ロックファン以外の幅広い層への訴求力を持たせた。

この対照的な二人のアプローチにより、男闘呼組は本格的なロックの側面と大衆的なポップスの側面を両立させることに成功した。

また、収録曲のうち4曲は各メンバーのソロボーカル曲となっており、それぞれの個性と音楽的ルーツを提示している。

成田昭次の「ROLLIN’ IN THE DARK」は攻撃的なハードロック。
高橋和也の「MEN’S BUGI」は自身の音楽的ルーツであるロカビリー調。
岡本健一の「KIDS」はU.K.ロックの影響が感じられるナンバー。
前田耕陽の「Carry On」はキーボーディストの彼らしいダンスロック調となっている。

歌詞は、大津あきらを中心に「反抗」「焦燥」「自由への渇望」といった、若者の普遍的なテーマが描かれ、既存のアイドルとは一線を画す世界観を構築した。

メンバー自作曲

作曲クレジットに「男闘呼組」と記された「ROLLIN’ IN THE DARK」と「MEN’S BUGI」の2曲は、メンバー自身の創造性を示す重要な楽曲である。後の3枚目のアルバム『参』では、メンバーによる自作曲が大幅に増加することになり、本作収録の2曲はその創作活動の出発点として位置づけられる。

関連作品・収録状況

35周年の再演

2023年の解散公演「LAST FOREVER」の日本武道館公演では、本作から「KIDS」「ルート・17」「ROLLIN’ IN THE DARK」「不良」の4曲が演奏された。デビューから35年を経た記念的ライブにおいて、アルバム収録曲の4割がセットリストに選ばれた事実は、本作がバンドのアイデンティティを形成する基盤であることを示している。

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