『参』(さん)は、日本のロックバンド男闘呼組の3枚目のスタジオ・アルバム。1990年3月28日にBMGビクターから発売された。男闘呼組唯一のオリコンチャート1位獲得アルバムとなった。

参(アルバム)
アーティスト:男闘呼組
発売日:1990年3月28日
形態:CD・カセットテープ
レーベル:BMGビクター / RCA
品番:R32H-1090 (CD) / RHT-8611 (CT)
前作『男闘呼組 二枚目』から9か月ぶりのオリジナル・アルバム。
本作は男闘呼組の音楽的転換点となった作品で、Mark Davis名義の馬飼野康二が「STAY WITH ME」を除く計11曲の編曲を担当。これまでの制作スタイルが今作で終了となり、Mark Davisが全面的に関わった最後のアルバムとなった。
収録楽曲はハードロック路線を突き進んでいく作風で、メンバーの作詞・作曲による楽曲も増加している。
収録曲
※特記以外作曲:馬飼野康二 編曲:Mark Davis
- BREAK THE LAW
作詞:成田昭次 作曲・編曲:Mark Davis - 自分勝手
作詞:高橋一也 作曲:成田昭次・高橋一也 編曲:Mark Davis・男闘呼組 - 狂おしく むなしく
作詞:岡本健一 - DON’T SLEEP
作詞:大津あきら - STAY WITH ME
作詞:J.Steele 作曲:S.Moore 編曲:S.Moore・男闘呼組 - OVER THE RAIN
作詞:大津あきら - BACK IN THE CITY
作詞:高橋一也 作曲:成田昭次 編曲:Mark Davis・男闘呼組 - NEVER SAY GOODBYE
作詞:松井五郎 - CROSS TO YOU -雨-
作詞:平井森太郎 - THE REAL
作詞:安藤芳彦 - REIKO
作詞・作曲:高橋一也 編曲:Mark Davis・男闘呼組 - 雨に抱かれて
作詞:高橋一也
制作
本作では、メンバー4人全員が作詞または作曲にクレジットされており、バンドとしての主体性がより明確に示されている。特に高橋和也(当時は高橋一也名義)は4曲の作詞と2曲の作曲(うち1曲は成田昭次との共作)を手がけており、制作の中心を担った。
高橋作詞作曲の「REIKO」は、歌詞の語りかけるスタイルがダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」を彷彿とさせるロックチューンとなっている。
「STAY WITH ME」とグリコCM・プロモーション
「STAY WITH ME」は江崎グリコ「アーモンドチョコレート」CMソングとして起用された。男闘呼組の出演とともに、CM内でもこの楽曲が印象的に使用され、当時のグループ人気を象徴するタイアップとなった。
CMの撮影はアメリカ・ロサンゼルスで実施され、現地での撮影およびレコーディング風景を収めたVHS「HELLO!! L.A.」も制作された。このVHSは江崎グリコの懸賞キャンペーンで一定数限定の非売品としてファン向けにプレゼント企画が実施された。
「HELLO!! L.A.」にはCM撮影や「STAY WITH ME」レコーディングのメイキング映像、現地オフショットなどが収録されており、応募抽選によるプロモーション展開は当時の話題となった。
「雨に抱かれて」制作エピソード
ラストを飾るバラード「雨に抱かれて」は、高橋和也が作詞を手がけ、ロンドンでレコーディングされた楽曲である。高橋は当時のプロデューサー蛎崎広柾のもと、何度も歌詞を書き直すことを求められ、当初は「雨に抱かれて」とは異なる内容だったという。ホテルに缶詰になりながら苦労して推敲を重ねていた中、レコーディング前夜、ロンドンの窓ガラスを伝う雨粒を見てインスピレーションを得る。
その景色から生まれたのが、冒頭の<窓ガラスつたう 雨の雫が涙に見えた>というフレーズであり、これが曲全体の情感を決定づけたと高橋は2023年のラジオ番組で語っている。成田昭次は、当時21歳の高橋によるこの作品を「男闘呼組の中で群を抜いて名曲」と絶賛している。ちなみに岡本健一らも、当時のロンドンではレコーディング後にピカデリーサーカスで遊んでいたと振り返っており、楽曲完成までの数日は高橋にとって「本当に苦労した」制作期間であったことがわかる。

関連作品
- DON’T SLEEP
アルバムバージョンとして収録。シングルとは異なり、2番のソロパートが高橋和也から岡本健一に変更されている。 - CROSS TO YOU -雨-
シングル「CROSS TO YOU」とは大きくアレンジが異なり、ピアノとストリングスを主体としたバラードバージョンとして収録されている。
後続活動との関連
Rockon Social Clubによるカバー
男闘呼組のメンバー(成田昭次、高橋和也、岡本健一、前田耕陽)が中心となって結成された Rockon Social Club は、2023年に男闘呼組の楽曲をカバーしたアルバム『2023』をリリースした。このカバーアルバムには、本作『参』に収録されている楽曲の中から「自分勝手(COVER)」と「BACK IN THE CITY(COVER)」の2曲が含まれている。ボーカルパートの割り振り(歌割り)は、成田昭次の提案により再構成され、原曲とは異なる全員参加のスイッチボーカル形式が採用されている。

アカペラとハーモニーの継承:「STAY WITH ME」と「ただいま」
本作『参』に収録されている「STAY WITH ME」は、男闘呼組の楽曲の中でも特にボーカルワークが際立つ一曲であり、ジャニーズ事務所所属グループとしては珍しく、全編がアカペラで構成されている。メンバー4人の声による四声ハーモニーを存分に聴かせ、彼らの高い歌唱力とハーモニー能力を象徴する楽曲となっている。一方、後身バンドである Rockon Social Club が2023年にリリースしたアルバム『1988』には、「ただいま」という楽曲が収録されている。Rockon Social Club のプロデューサーである寺岡呼人の作詞・作曲によるこの楽曲は、4人全員がボーカルを担当できるという男闘呼組の強みを活かしたドゥーワップ調のハーモニーソングとして制作されている。