『正しいオトナたち』(原題:Le Dieu du carnage)は、岡本健一が2019年出演した舞台作品。フランスの劇作家ヤスミナ・レザによる四人芝居を、演出家上村聡史の演出で上演された。

ヤスミナ・レザの原作は2008年にフランスで初演され、イギリスの俳優レイフ・ファインズらの出演版が2009年のローレンス・オリヴィエ賞演劇部門最優秀新作コメディ賞を受賞、同年ブロードウェイ版はトニー賞演劇部門最優秀作品賞のほか計3部門を受賞した。2011年にはロマン・ポランスキー監督により映画化された。
あらすじ
ウリエ家の夫妻と、隣人であるレイユ夫妻が、彼らの息子同士が公園で起こした喧嘩について話し合うため集まる。ウリエ家の息子がレイユ家の息子に棒で殴られ、前歯が欠けるという事件が発端であった。当初、双方の親たちは寛容さを装い冷静に事態を収めようと試みるが、話し合いは次第にエスカレートし、各々の本音や主張がむき出しになっていく。弁護士であるレイユ家の夫が仕事の電話に忙殺されたり、妻が気分を悪くして嘔吐するなど、対話は制御不能な状態へと陥る。教育観、子どもの躾、夫婦関係といった日常的な問題から、やがてより深刻なテーマへと発展していく。
岡本健一の出演
岡本健一は、弁護士であるアラン・レイユ役を演じた。当初から冷静なふりをしているが、実は自身の仕事を優先させており、話し合いのさなかに仕事関連の電話が次々と入る。このアランの態度が、ウリエ夫妻の怒りを誘発させる一因となる。岡本は、理性と衝動のはざまでもがく大人の複雑な心理を、経験豊かな演技で表現した。

岡本は、本作の意義について以下のようにコメントしている。
「舞台『正しいオトナたち』は、二組の夫婦による、お互いの子供達が起こしたある喧嘩が発端になり、その親達がどのように解決していくのが最善なのかを話し合う室内での会話劇になります。どこの国でもどの時代でも、この日本でもよくあり得る出来事なのですが、そもそもその時その現場に居合わせていない人達の会話には、聞いた話しやイメージで行われてしまい、怒りや悲しみ、愛情や憎悪が渦巻いて、真実が何処にあるのかが全くわからなくなってしまいがちです。」
また、本作で大切にされている「大人らしさ」について、岡本は理性と感情のバランスについて次のように述べている。
「正しいオトナたちは正しくないのか、正しいのかを考える事すら無意味に感じてしまう位に、白熱してしまうオトナたちの姿を最高に誇るべき演出家上村聡史がどのように私達四人の役者を正しく導いてくれるのか、濃密な稽古時間を得て、劇場でお客様と共有する時間がたまらなく楽しみです。深刻な話なのですがかなり笑えて面白いと思います。」
キャスト&スタッフ
- ヴェロニック・ウリエ(ウリエ家の妻) – 真矢ミキ
- ミシェル・ウリエ(ウリエ家の夫) – 近藤芳正
- アラン・レイユ(レイユ家の夫、弁護士) – 岡本健一
- アネット・レイユ(レイユ家の妻) – 中嶋朋子
- 作 : ヤスミナ・レザ(原題:Le Dieu du carnage)
- 翻訳 : 岩切正一郎
- 演出 : 上村聡史
公演
- 11月28日-29日 東京IMAホール
- 12月 4日 愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
- 12月 7日- 8日 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
- 12月13日-24日 東京グローブ座
岡本健一と成田昭次の再会
『正しいオトナたち』の名古屋公演(2019年12月4日)は、岡本健一のキャリアにおいて特別な意味を持つ。この公演で、男闘呼組のメンバーである成田昭次が観劇に訪れた。成田は1993年の男闘呼組の活動休止以来、約27年ぶりに東京ドームで再会(2019年9月、故ジャニー喜多川氏のお別れ会)した後、この舞台観劇を契機に関係が深まった。
公演後、岡本健一と成田昭次はカラオケに出かけ、成田の歌声を改めて聴いた岡本は、男闘呼組の再始動への確信を得たとされている。この名古屋公演での邂逅は、その後の男闘呼組の再始動へと繋がる重要なマイルストーンとなった。

