「パズル」は、日本のロックバンド・Rockon Social Clubによる楽曲。作詞・作曲・編曲は寺岡呼人が担当。2023年2月24日に各音楽配信サービスにてデジタルシングルとしてリリースされ、同年3月1日発売の1stアルバム『1988』にも収録された。
背景
本楽曲はもともと、2022年4月8日に発売された成田昭次のミニアルバム『犬も歩けば棒に当たる』に収録されたソロ楽曲である。作詞・作曲を担当した寺岡呼人は、成田との初対面時の会話をもとに本作を制作し、「なくしたパズルのピースが今ごろ出てきた」という歌詞に象徴されるように、バンド活動のブランクを経た再会や再出発の希望を描いた内容となっている。
同年7月16日には、TBS系音楽特番『音楽の日2022』に男闘呼組がサプライズ出演。披露された3曲のうちの1曲として「パズル」が選ばれた。この時点では、Rockon Social Clubはまだ存在しておらず、番組で歌われた「パズル」はあくまで成田昭次のソロ曲を4人でカバーした形での披露であった。
この日には、「パズル(成田昭次 Ver.)」のミュージックビデオも同時に成田昭次のチャンネルと男闘呼組の公式サイトに公開されており、男闘呼組の4人(成田昭次、高橋和也、岡本健一、前田耕陽)が登場。アートディレクターの信藤三雄が手がけたアーティスト写真撮影時の様子と、リハーサル風景を記録した映像で構成されている。この際に撮影された写真は、男闘呼組再始動の公式アー写として使用され、復活ライブや各種メディア出演時のビジュアルに広く用いられた。
Rockon Social Clubバージョンのリリース
その後、男闘呼組メンバーを中心に新バンド・Rockon Social Clubが結成され、2023年2月24日に「パズル」のバンドバージョンが配信リリースされた。バンドとしての正式なレコーディングにより、「成田昭次のソロ曲を4人でカバーする」形だった過去のパフォーマンスから、ようやく男闘呼組の4人が公式に歌った音源として再定義されたことになる。
このRockon Social Clubバージョンのジャケット写真には、信藤三雄が2022年に撮影した男闘呼組のアー写がそのまま使用されている。なお、信藤は本リリースの直前である2023年2月10日に逝去しており、本作のビジュアルには追悼的な意味合いも込められている。
収録曲
- パズル
作詞・作曲・編曲:寺岡呼人
制作と構成
「パズル」は、もともと成田昭次の個人的な過去と復帰に寄り添うように書かれたが、成田自身が「4人で歌った方がこの曲は完成する」と感じ、男闘呼組の4人に提案して実現したものである。歌唱パートを各メンバーに振り分けることで、それぞれの歩んできた人生と歌詞が重なり合い、聴き手に強い共感と感動を与える構成となっている。
演奏面では、前田のピアノに始まり、成田と岡本のギター、高橋のベースというバンドアンサンブルによって、シンプルながらも温かみのある音像が構築されている。特にステージ上では、楽曲終盤に自然と前田の元に他の3人が集まっていくという演出も印象的であり、視覚的にも“再結集”の象徴とされている。
歌詞は、過去を振り返りながらも希望を見出す内容で、「不恰好で頼りないピースが再び嵌るパズル」を通じて、時間の流れ、葛藤、和解、再生といった普遍的なテーマを描いている。そのストーリーテリング性は1990年代J-POPの系譜を継ぎつつ、現代の視点から再構築されたものであり、円熟したロックバンドならではの深みを感じさせる作品となっている。
クレジット
※アルバム「1988」より抜粋
E Guitar: Shoji Narita, Kenichi Okamoto
Bass: Kazuya Takahashi
Keyboard: Koyo Maeda
Drums: Hideki Aoyama
Strings: Daisuke Kadowaki Strings
Other Instruments: Yohito Teraoka