『Le Fils 息子』(ル・フィス むすこ)は、フランスの劇作家フロリアン・ゼレール作の舞台作品。岡本健一と実子の岡本圭人が親子役で共演した再演作である。ゼレールが手がけた「家族三部作」(『Le Père 父』『Le Fils 息子』『La Mère 母』)の一つで、思春期の絶望と不安に苛まれながら必死にもがく息子と、愛によって息子を救おうとする父親の葛藤を描く家族の物語。2018年にパリで初演され、モリエール賞にて最優秀新人賞を受賞するなど高い評価を得た。世界13ヵ国以上で上演され、2023年にはヒュー・ジャックマン主演で映画化された。日本では2021年に岡本圭人の初舞台・初主演作として初演され、2024年に再演された。

『Le Fils 息子』は、ゼレールが『La Mère 母』『Le Père 父』に続いて執筆した家族三部作の一作である。2018年にパリ・シャンゼリゼ劇場で初演され、フランス演劇界で最高の栄誉とされるモリエール賞で新人賞を受賞するなど高い評価を獲得した。その後、ロンドンのウエストエンドなど世界13か国以上で上演され、タイムズ紙やデイリーテレグラフなど各紙でも絶賛された。2022年にはゼレール自身の監督によりヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーンの出演で映画化され、2023年に日本でも公開された。
日本では2021年8月に東京芸術劇場プレイハウスで初演され、2024年4月には『La Mère 母』との同時上演という形で再演された。
あらすじ
17歳の少年ニコラは難しい時期を迎えていた。両親の離婚により、家族が離れ離れになったことで深刻なショックを受け、何に対しても興味が持てなくなっていた。学校に通わず嘘を重ねながら日々を過ごしていたところ、高校を退学になってしまう。
新しい家族と暮らしていた父親ピエールは、前妻で母親のアンヌから息子の異変を聞き、何とか彼を救いたいと考える。ニコラは生活環境を変えることが自分を救う唯一の方法だと考え、父親と再婚相手、そして年の離れた小さな弟と一緒に暮らすことを決める。
新しい生活の中で、ニコラは父ピエールと向き合い始める。愛によって息子を救おうとする父と、父との距離を縮めようとしながらも反発する息子。二人の間には葛藤と愛情が揺れ動く。悩み、迷い、傷つきながら、自分を再発見していく絶望した若者の姿が描かれる。舞台上では現実と幻想の境が溶け、複数の場面が反復され、登場人物の内面的世界が舞台化される。
制作スタッフ
- 作:フロリアン・ゼレール
- 翻訳:齋藤敦子
- 演出:ラディスラス・ショラー
フロリアン・ゼレールは1979年パリ生まれのフランスの小説家・劇作家・映画監督で、「現代においてもっとも心躍る劇作家」として世界中から注目されている。ラディスラス・ショラーは、ジャンルの垣根を超えた演出で知られるフランスの演出家で、過去に演出した舞台はモリエール賞に29回ノミネートされ、『Le Père 父』では最優秀演劇賞など6部門を受賞している。齋藤敦子は映画評論家・字幕翻訳家としても活動する翻訳者である。
キャスト
- ニコラ:岡本圭人
- アンヌ(ニコラの実母):若村麻由美
- ピエール(ニコラの父):岡本健一
- ソフィア(ピエールの再婚相手):伊勢佳世
- 医師:浜田信也
- 看護師:木山廉彬
岡本圭人は本作が2021年の初演時に初舞台となり、実父である岡本健一と親子役を演じたことで話題を集めた。アメリカの名門演劇学校アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツで学んだ経歴を持つ。若村麻由美は『La Mère 母』『Le Fils 息子』『Le Père 父』の家族三部作全てにアンヌ役で出演し、『Le Père 父』では第27回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞している。
浜田信也は1979年生まれの俳優で、2004年に劇団イキウメに加入し、2013年に第47回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した。木山廉彬は1988年生まれの俳優で、2009年に文学座附属演劇研究所に入所し、2019年に野田秀樹が主宰する東京演劇道場のメンバーとなった。
公演
東京公演
- 期間:2024年4月9日(火)~4月30日(火)
- 会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
全国ツアー公演
- 鳥取:2024年5月6日、鳥取県立倉吉未来中心 大ホール
- 兵庫:2024年5月11日・12日、兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
- 富山:2024年5月19日、オーバード・ホール 中ホール
- 山口:2024年5月26日、山口市民会館 大ホール
- 高知:2024年5月31日、高知市文化プラザかるぽーと 大ホール
- 熊本:2024年6月8日、熊本県立劇場 演劇ホール
- 松本:2024年6月15日、まつもと市民芸術館 主ホール
- 豊橋:2024年6月29日・30日、穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
主催は公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場、後援は在日フランス大使館とアンスティチュ・フランセが務めた。文化庁文化芸術振興費補助金および独立行政法人日本芸術文化振興会から助成を受けた。企画制作は東京芸術劇場が担当した。
評価
岡本圭人は本作を含む『La Mère 母』『Le Fils 息子』の演技が評価され、2025年1月31日に第59回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した。受賞理由として、フランスの独特の空気感を舞台で体現していたことや、若い世代の感受性を観客に伝える巧みさが評価された。また、実の父親との共演が「観客がその時間を共有でき、エキサイティングな結果を残した」と評された。
関連作品
本作は『La Mère 母』と同時上演され、両作品は2024年4月に東京芸術劇場で公開された。『La Mère 母』は4月5日~29日にシアターイーストで、『Le Fils 息子』は4月9日~30日にシアターウエストで上演された。


