『La Mère 母』

『La Mère 母』(ラ・メール はは)は、フランスの劇作家フロリアン・ゼレール作の舞台作品。岡本健一が実子の岡本圭人との親子共演で話題を呼び、2024年の日本上演では、若村麻由美が母役を担った。ゼレールの家族三部作『Le Père 父』『Le Fils 息子』『La Mère 母』のうち、最初に執筆された作品で、2010年にパリで初演。家庭を第一に生きてきた母親が、子どもたちの独立と夫の離別により喪失感に陥る心理状態を、複雑な舞台空間を通じて描く。

『La Mère 母』は、フロリアン・ゼレールが2010年に執筆した戯曲である。ゼレールが『Le Père 父』『Le Fils 息子』の執筆に先立つ作品で、ゼレール自身の母への思い、家族への贖罪の念が込められた作品とされる。2010年にパリで初演され、その後イギリス、スペイン、南アフリカなど様々な国で上演されてきた。

国際的な評価も高く、最近ではフランスを代表する名女優イザベル・ユペールが主演する版がブロードウェイで上演され、大きな話題となった。

あらすじ

アンヌはこれまで自分のすべてを捧げて、愛する子どもたちのため、そして夫のために家庭を第一に考えて生きてきた。それはアンヌにとってかけがえのない悦びで至福の時間であった。しかし年月が過ぎ、子どもたちは成長して彼女のもとから巣立っていってしまった。息子も娘も、そして今度は夫までも去ろうとしている。家庭という小さな世界の中で、四方八方から逃げ惑う彼女は、そこには自分ひとりしかいないことに気づく。母は悪夢の中で幸せだった日々を思い出して、心の万華鏡を回し続ける。

家族三部作について

La Mère 母』は、フロリアン・ゼレールの家族三部作の中では最初に執筆された作品である。その後、『Le Père 父』(2012年執筆)、『Le Fils 息子』(2018年執筆)と続いた。三作品は関連性を持ちながらも、それぞれが異なる家族関係の観点から親子や夫婦の葛藤を描いている。

『Le Père 父』は、認知症を患う高齢の父親の視点から世界が徐々に混乱していく状況を描き、2014年にフランスの最高峰の舞台賞であるモリエール賞を受賞した。『Le Fils 息子』は思春期の息子の心理的な苦悩と、両親の離婚後の家族関係の複雑さを描き、映画化もされた傑作として知られている。

『La Mère 母』『Le Fils 息子』の同時上演が2024年4月から6月にかけて企画された。これは日本での『La Mère 母』初演となった。

キャスト

  • アンヌ役 – 若村麻由美
  • ニコラ役 – 岡本圭人
  • ピエール役 – 岡本健一
  • その他の役 – 伊勢佳世

スタッフ

  • 演出 – ラディスラス・ショラー
  • 作 – フロリアン・ゼレール
  • 翻訳 – 齋藤敦子

岡本健一と岡本圭人の親子共演

本作『La Mère 母』での岡本健一と岡本圭人の親子共演は、『Le Fils 息子』(2021年初演)に続く二度目のタッグとなった。

2021年の『Le Fils 息子』初演では、岡本圭人にとって初舞台となり、初主演作品となった。当時の印象について、岡本圭人は「初めての舞台、そして俳優となっての第1本目の舞台、憧れだった父親との親子共演で、思い出に残っていることはいっぱいあります」と述べている。

また、その際のエピソードとして、初日15分前に父親の岡本健一が楽屋を訪れ、緊張している息子に対して「これからお前の新しい人生、新しい道が広がっていく。だから、自分を信じてこれからもやっていってほしい」と励ましたという。岡本圭人は当時の心境について、「涙が出そうになった」と述懐している。

2024年の『Le Fils 息子』再演における『La Mère 母』との同時上演では、同じ役名の人物が全く異なる二つの舞台で、異なる視点から描かれることになった。岡本圭人は『La Mère 母』についてのコメントで、「初めて台本を読んだ時、感情が追いつきませんでした。ストーリーが進むにつれて、登場人物の間に何が起きているのか、なぜそうなるのか、全く分かりませんでした。しかし稽古を重ねるにつれて、理解が追いつくようになりました。何がキーとなったかというと『愛』です」と述べている。

『La Mère 母』でのピエール役について、岡本健一は「いよいよ初日を迎えます。私たちの生活の中で『母』なるものが家族のために、どれだけ大きな愛を注いでいるか、どれだけ寂しく孤独を感じているかを知ることが出来る、とても重要な作品です。四人の登場人物の、時には滑稽で笑える行動、母のために懸命に思いやる姿に、共感と反発、喜びと哀しみ、そして希望を感じて下さい」とコメントしている。

公演情報

東京芸術劇場を中心に上演された。東京での主な公演は、2024年4月5日から4月29日にかけて東京芸術劇場シアターイーストで開催され、その後地方での巡演も行われた。


東京公演:2024年4月5日(金) – 2024年4月29日(月)

  • 5月5日(日・祝)鳥取・倉吉未来中心 大ホール
  • 5月10日(金)兵庫・芸術文化センター 阪急中ホール
  • 5月11日(土)兵庫・芸術文化センター 阪急中ホール
  • 5月19日(日)富山・オーバード・ホール 中ホール
  • 5月26日(日)山口・山口市民会館 大ホール
  • 6月1日(土)高知・文化プラザかるぽーと 大ホール
  • 6月8日(土)熊本・県立劇場 演劇ホール
  • 6月15日(土)松本・市民芸術館 主ホール
  • 6月29日(土)豊橋・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
  • 6月30日(日)豊橋・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

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