『グレイクリスマス』(2025年版)は、劇作家・斎藤憐の同名舞台作品を劇団民藝が2025年1月から3月にかけて中国・近畿・四国地方を中心に全国巡演した公演である。演出は丹野郁弓が担当し、客演として岡本健一が権堂役で出演。2020年以降継続される新演出版の最新シリーズとして位置づけられている。
初演


劇団民藝公演「グレイクリスマス」2018
『グレイクリスマス』(ぐれいくりすます)は、劇作家・斎藤憐による日本の舞台作品。1945年の敗戦直後から1950年までの5年間を、旧華族・五條伯爵家で迎えるクリスマス…

2025年版は、COVID-19による制限緩和後の通常営業期とも言える社会状況下での全国巡演であり、前年までの巡演エリア拡大を踏まえつつ多様な地方都市への上演が積極的に行われた。舞台美術、照明、衣装などスタッフ陣も刷新されつつ、丹野郁弓演出の深化を継続し、作品の歴史的背景である戦後の激動期と家族の群像劇というテーマをより重層的に描き出している。
岡本健一はこの年も権堂役を務め、権力の波に翻弄されながらも逞しく生きようとする複雑な青年像を高い評価を受けて演じ続けている。
主なキャスト
- 五條伯爵:千葉茂則
- 伯爵夫人・華子:中地美佐子(奈良岡朋子から受け継いだ精神性を継続)
- ジョージ・イトウ(日系二世の軍人):塩田泰久
- 権堂(闇屋):岡本健一(客演)
- 伯爵令嬢・雅子:神保有輝美ほか
上演
2025年1月から3月にかけて、岡山、倉敷、高松、松山、藍住など中国地方、近畿地方、四国地方の複数の都市で上演された。例会公演や市民劇場主催の形態で行われ、地域に根差した演劇鑑賞文化への貢献を目指す。
2025年版は、初演から30年以上経過した長期にわたる上演の中で、作品を新たな世代や地域の観客に届ける役割を担う。丹野郁弓による安定感のある演出により、作品の歴史的・社会的テーマが今日の日本の文脈と重ね合わされて提示されている。
また、岡本健一の権堂役は、戦後期の社会構造だけでなく現在にも通じる社会的圧力や葛藤の象徴として、深みを増した演技で支持を集めている。







