『冒険者たちのうた』は、NARITA THOMAS SIMPSONによる1作目のミニアルバムであり、2024年4月10日にリリースされた。前身バンド「成田商事」時代から活動していた成田昭次(Vo/G)、寺岡呼人(B)、青山英樹(Dr)による3ピースロックバンドとして、改名後初の正式な音源作品となる。
本作には、寺岡呼人プロデュースによる新曲に加え、成田昭次が15年ぶりに書き下ろした3曲を含む全8曲を収録。ジャンルの枠にとらわれないクロスオーバーなサウンドと、3人の個性が濃密に織り込まれた楽曲群が特徴となっており、シンプルながらもスケール感にあふれるバンドサウンドが展開されている。
収録曲
※全曲編曲:寺岡呼人
- 花火と君
作詞・作曲:寺岡呼人
本作の先行配信曲であり、呉工業「オキーフ」CMソング。四つ打ちのビートと爽やかなメロディが特徴のポップロックナンバー。夏の花火のように瞬間の輝きを切り取った恋愛模様を描いており、ライブでも盛り上がる定番曲となっている。 - 冒険者たちのうた
作詞・作曲:寺岡呼人
アルバム表題曲。リズムを保ったまま進行する力強いナンバーで、歌詞ではそれぞれの人生という“冒険”を歩む姿が描かれている。タイトルは後から決定されたが、バンドの現在地と未来を象徴する曲としてメンバーに支持された。 - 名もない愛の物語
作詞・作曲:成田昭次
成田が約15年ぶりに手がけたオリジナル曲。ブリティッシュ・ロック調のサウンドに乗せて、名もなきふたりの切ない恋の軌跡を描いており、メンバーからも「曲作りの再起点になった」と語られている。歌詞では過去を抱えた主人公が、それでも誰かと歩むことへの希望を見出す姿が描かれる。 - クライシス
作詞・作曲:成田昭次
成田が名古屋で音楽から離れていた時期の心情を反映したミディアムチューン。静かに沈むような旋律に乗せて、情熱を失いかけた過去の自分と、それでも立ち上がろうとする現在の心情が丁寧に綴られている。 - 君が欲しい
作詞・作曲:寺岡呼人
喪失と再生を描いたバラード。冒頭の「今日も1人天国へ旅立った」という歌詞に象徴されるように、生と死、記憶とつながりをテーマにしている。時代を問わず共感を呼ぶ普遍的なテーマを持ちながら、今この時代への問いかけも感じさせる。 - B・P・M!
作詞・作曲:RYO(Little Black Dress)
Z世代の女性シンガーソングライターRYO(Little Black Dress)による提供曲。ディスコティックなサウンドとパーティ感に満ちた明るいナンバーで、アルバム内でもひときわカラフルな存在となっている。デモの完成度が高く、アレンジはほぼそのまま使用された。 - 思い出になる日まで
作詞:寺岡呼人・西野蒟蒻 作曲:寺岡呼人
80年代のニューミュージックやシティポップの影響を感じさせるラブソング。過去の記憶と現在を結ぶような穏やかなメロディが印象的で、青山英樹は「父・青山純の時代を感じる」と語っている。間の取り方が難しいとされるドラムにも注目。 - いっぽんみち
作詞・作曲:成田昭次
アルバムの最後を締めくくる人生讃歌。タイトル通り“一本道”を歩む覚悟と希望が歌われており、音楽活動を再開した成田の決意が込められている。もとは漢字表記だったが、道が開けていくことを願って平仮名に変更されたという。
背景
『冒険者たちのうた』は、バンド名を「NARITA THOMAS SIMPSON」に改名してから初めてのアルバムであり、成田昭次、寺岡呼人、青山英樹の3人にとって新たな出発点となった作品である。アルバム制作は2023年末から2024年初頭にかけて短期間で進められ、ツアーにあわせて急ピッチで完成された。楽曲の多くは新たに書き下ろされたもので、特に成田が手がけた「名もない愛の物語」「クライシス」「いっぽんみち」は、彼にとって15年ぶりの作詞・作曲作品となった。
レコーディングは、信頼関係を土台とした柔軟な体制のもとで行われ、青山は6曲分のドラムを1日で録音したという。成田は「英樹くんのドラムによって曲が動き出す感覚があった」と語り、寺岡もまた「バンドにプロデューサーがいる強み」を活かしつつ、各曲に個性を与えるアレンジを施した。寺岡が制作過程で目指したのは、メンバーが持ち寄った素朴なデモを「二次元から三次元へ」「モノクロからカラーへ」1と変換する作業であり、それが作品全体における音の多彩さや広がりにもつながっている。
アルバムタイトル曲「冒険者たちのうた」は、メンバーそれぞれが歩んできた人生の旅路を象徴するものとして位置づけられており、成田は「この曲がアルバム全体を物語ってくれている」と述べている。また「いっぽんみち」では、自身の音楽的復帰とこれからの道のりへの覚悟を表明しており、「誰もがそれぞれの一本道を歩いている」という普遍的なテーマが描かれている。
本作は、NARITA THOMAS SIMPSONという新体制のもとで初めて本格的に提示されたオリジナルアルバムであり、従来のハードなロックバンドとは異なる柔らかさと自由な空気感を持ち合わせている。バンド内では成田がメインボーカルを務める構成が特徴であり、寺岡は「この3年間で昭次くんはどんどん進化している」と語り、青山も「信頼の中で演奏できることが大きい」と振り返っている。
クレジット
- Drums: Hideki Aoyama (#1 – #5, #8)
- Bass: Yohito Teraoka (#1 – #8)
- Guitar: Shoji Narita (#1, #2)
- Electric Guitar: Shoji Narita (#3 – #6, #8) / Masayoshi Furukawa (#6, #7)
- Acoustic Guitar: Shoji Narita (#3 – #5, #8) / Yohito Teraoka (#7)
- Keyboards: Kenta Yamamoto (#1 – #8)
- Drum Programming: Leo Nanjo (#6)
- Other Instruments: Kenta Yamamoto (#1 – #8) / Yohito Teraoka (#1 – #8)
NARITA THOMAS SIMPSON
GOOD VIBES VOCAL
SHOJI NARITA
GOOD VIBES PRODUCER
YOHITO TERAOKA
GOOD VIDES DRUMS
HIDEKI AOYAMA
Recorded & Mixed by Yoshihide Mikami
Recorded at CRY BABY STUDIO / VICTOR STUDIO
Mastering by Mitsuyasu Abe (Sony Music Studios Tokyo)
A&R Masashi Ochi
Artist Management: Namie Sato
Promotion Director: Yoshimasa Sekiya
Design: Ryoji Ohya (Z&Z)
Design Coordinator: Atsuki Yukawa (White Briefs)
Photo: Santin Aki
Executive Creative Producer: Hiroto Tanigawa