「秋」(あき)は、男闘呼組の2枚目のシングルです。1988年12月27日にBMGビクターから発売されました。
概要
デビューシングル「DAYBREAK」の大ヒットに続きリリースされたセカンドシングル。前作同様、作詞を大津あきら、作曲・編曲をMARK DAVIS(馬飼野康二のペンネーム )が担当した。
表題曲「秋」は、季節感を前面に出したドラマティックなロックナンバーであり、前作の延長線上にありつつも、より複雑な曲構成を持つとされる。カップリング曲の「LONELY…」は、メンバー主演の映画『ロックよ、静かに流れよ』の挿入歌及びエンディングテーマとして使用された 。
オリコン週間シングルチャートでは初登場1位を獲得し 、1989年度の年間シングルチャートでも13位を記録するヒットとなった 。売上枚数は約42万5千枚を記録した 。
本作のヒットにより、男闘呼組はデビューから2作連続でのオリコン1位を獲得し、当時の人気を確固たるものにした。表題曲の別バージョン「秋 -It’s a ballad-」が、次作シングル「TIME ZONE」のカップリングとして収録された 。
基本データ
- 発売日:1988年12月27日
- レーベル:BMGビクター
- 形態:EPレコード、カセットテープ (CT)、8cmCD
- 品番:
- 7インチ: B07S-38
- 8cmCD: B10D-118
- カセット: B10T-118
- チャート最高順位:
- タイアップ:東宝配給映画『ロックよ、静かに流れよ』挿入歌(「LONELY…」) [1]
収録曲
(全作詞:大津あきら、作曲・編曲:MARK DAVIS (馬飼野康二))
- 秋 (4:40)
- LONELY… (4:28)
カップリング曲。映画『ロックよ、静かに流れよ』挿入曲(エンディングテーマ)[1]。
カセットテープ版には、両曲のオリジナル・カラオケも収録されている 。
音楽性/歌詞分析/制作
音楽性
「秋」は、デビュー曲「DAYBREAK」の成功を受けて制作されたセカンドシングルであり、音楽的にはその延長線上に位置づけられる。しかし、単なる踏襲ではなく、曲構成において更なる試みが見られる。特に1コーラス目の冒頭部分ではミディアムテンポ風のアレンジが施されるなど、より複雑な展開を持つ楽曲となっている5。全体としては、ドラマティックなイントロから始まり、男闘呼組らしいロックサウンドと歌謡曲的なメロディラインが融合した楽曲である6。
一方、カップリング曲の「LONELY…」は、映画『ロックよ、静かに流れよ』の挿入歌およびエンディングテーマとして書き下ろされた 。映画のラストシーンを静かに盛り上げるバラード調の楽曲で7、高橋和也(当時は高橋一也)の哀愁を帯びたボーカル、成田昭次のややかすれた高音、岡本健一の甘いソロパート、そして前田耕陽のキーボードがフィーチャーされている8。
両曲のアレンジを手掛けたMark Davis(馬飼野康二)は、男闘呼組の初期のヒット曲の多くに関わり、バンドのサウンドイメージ形成に大きく貢献した 。彼の編曲は、ロックバンドとしての骨格を保ちつつ、キーボードを効果的に使用し、メロディを際立たせるキャッチーさを持ち合わせていた 。これは、バンドメンバー自身が作曲に関与し、よりハードロック色の強い楽曲(例:「ROLLIN’ IN THE DARK」、編曲:戸塚修 )とは異なるアプローチであり、シングル曲としての訴求力を高める役割を果たしたと考えられる 。
歌詞分析
作詞は前作に引き続き大津あきらが担当 。大津は、男闘呼組以外にも多くの一流アーティストに詞を提供しており、特に青春期の切なさや情熱を描くことに定評があった 。
「秋」の歌詞は、タイトル通り秋の情景「稲妻光らせ サヨナラの雨」を背景に、別れの切なさややるせなさを男性的な視点から描いている9。これは、デビュー曲「DAYBREAK」や映画主題歌「ロックよ、静かに流れよ -Crossin’ Heart-」にも通じる、男闘呼組の初期のイメージを形作る重要な要素であった 。
「LONELY…」は、映画のストーリーと深く結びついており、孤独や仲間との絆、逆境の中での夢といったテーマを扱っている 。歌詞中の「知らず知らずに お前の好きだった あの歌今も くちずさむよ」や「JUST LONELY FRIEND 追いやられても お前といるだけで 最高だった MY FRIEND」といったフレーズは、映画の登場人物たちの心情を代弁し、強い共感を呼んだ 。
制作
デビュー曲「DAYBREAK」の大ヒットを受け、セカンドシングルへの期待は高く、制作陣には大きなプレッシャーがかかっていた。「業界では、デビュー曲よりもセカンドシングルのほうがむずかしい」と言われる中、メンバーとスタッフは熱のこもった音作りに連日取り組んでいた。
レコーディングは複数の候補曲の中から選定を進める形で行われた。メンバーはレコーディングに対してそれぞれ異なるアプローチを見せていた。高橋一也(当時)は孤独を感じつつも歌い切った時の感動を語り、歌詞を非常に重視し、内面を表現することを心がけていた。成田昭次は雰囲気を大切にし、納得いくまで時間をかけるタイプだった。岡本健一は歌唱法を固定せず、常に新しい表現を模索し、自身で作詞作曲した楽曲をアルバムに入れたいという意欲を見せていた。前田耕陽はコーラスパートが多く、メインボーカルの収録を待つ間も周囲に気を配り10、チームワークを重視する姿勢を見せていた。
メンバーは、シングル曲の選定に関してはディレクターに任せる姿勢を示しつつも、アルバム制作においては自分たちの意見を反映させたいという意向を持っていた11。これは、アイドルとしての側面と、ロックバンドとしての音楽的探求心との間でバランスを取ろうとしていた当時の彼らの状況を反映していると言える。成田がジョージア・サテライツやライ・クーダー、アルバート・コリンズといったアーティストを聴いていると語る一方、高橋が「ジョージアをファンの子が聴いても、おもしろくもなんともないもん(笑)」と応じるなど、バンドとしての音楽性とファン層への配慮についての意識がうかがえる。レコーディングの合間にはメンバーでアカペラを試みるなど、音楽への情熱とグループとしての結束力の高さが示されている。
関連作品・バージョン違い
秋 -It’s a ballad-
- 表題曲「秋」のバラードバージョン。
- 次作シングル「TIME ZONE」(1989年2月28日発売)のカップリング曲として収録された 。
- ベストアルバム『BEST OF BALLADS』(1992年)にも収録 。
- コンピレーションアルバム『NEW BEST 男闘呼組』(1994年)には「秋」と表記されているが、実際にはこのバラードバージョンが収録されている 。
収録アルバム
- 秋
- 『HIT COLLECTION』(1999年)
- オムニバスアルバム『青春歌年鑑 BEST30 ’89』(2000年)
- LONELY…
- 『BEST OF BALLADS』(1992年)
参照元
- オリコン・シングル・チャートブック(完全版):1968 – 2010』オリコン・エンタテインメント、2012年2月、p.181。ISBN 978-4871310888。 ↩︎
- オリコン・シングル・チャートブック(完全版):1968 – 2010』オリコン・エンタテインメント、2012年2月、p.181。ISBN 978-4871310888。 ↩︎
- TBSテレビ『ザ・ベストテン』ランキングデータより(1989年2月2日付チャートで1位) ↩︎
- 日本テレビ『歌のトップテン』ランキングデータより(1989年1月30日付チャートで1位) ↩︎
- 男闘呼組『HIT COLLECTION』歌詞カード解説 (解説:榊ひろと) ↩︎
- 『Potato』1989年1月号 p24 ポテト・アップル・カンパニー ↩︎
- 『Potato』1989年1月号 p24 ポテト・アップル・カンパニー ↩︎
- 『Potato』1989年1月号 p24 ポテト・アップル・カンパニー ↩︎
- 『Potato』1989年1月号 p24 ポテト・アップル・カンパニー ↩︎
- 『BEST ONE』 1988-12月臨時増刊 p56-57 実業之日本社 ↩︎
- 『BEST ONE』 1988-12-15 p112 実業之日本社 ↩︎