
『男闘呼組 二枚目』(おとこぐみ にまいめ)は、日本のロックバンド・男闘呼組が1989年にリリースした2枚目のスタジオ・アルバムである。BMGビクターより発売され、オリコン週間アルバムチャートで最高2位を記録した。馬飼野康二(Mark Davis名義)が編曲と大半の作曲を手掛けつつ、メンバー自身による作詞・作曲楽曲も収録。ハードロックやポップロックを基調としたサウンドが特徴である 。
概要
『男闘呼組 二枚目』は、男闘呼組にとって通算2枚目となるオリジナル・アルバムである。1989年6月28日にBMGビクター(RCAレーベル)からリリースされた 。これは、1988年9月26日発売のデビューアルバム『男闘呼組』から約9か月ぶりのスタジオ・アルバムとなる 。発売当時のメディア形式は、CD(品番:R32H-1081、価格:3,212円税込)、LPレコード(品番:RHL-8602)、カセットテープ(品番:RHT-8602)の3形態であった 。
商業的には成功を収め、オリコン週間アルバムランキングでは最高位2位を獲得し、同チャートのトップ300圏内に12週間にわたってランクインした 。また、1989年度のオリコン年間アルバムランキングでは48位を記録している 。
本作の特徴的な点として、前作アルバム以降にリリースされていたシングル「秋」(1989年2月28日発売)および「TIME ZONE」(1988年12月27日発売)が収録されていない 。先行シングルをアルバムに収録しないという選択は、単なる楽曲集ではなく、アルバム全体としての一貫性や特定の音楽的方向性を意図した構成であった可能性を示唆している。当時の音楽メディアからは、サウンド面で米国のロックバンド、ボン・ジョヴィからの影響が指摘されており 、アルバム全体で統一感のあるロックサウンドを目指した結果、先行シングルの作風とは異なるコンセプトが優先されたとも考えられる。
収録曲
全編曲:Mark Davis/作曲:馬飼野康二(特記以外)
- Burn it
作詞:高柳恋 - 熱くささやかな叫び
作詞:岡本健一 - 追憶の挽歌
作詞:安藤芳彦 - YO-YO
作詞:高橋一也
※高橋一也ソロ - FOREVER
作詞:前田耕陽 - 翼なき疾走
作詞:大津あきら - 赤ちょうちんでくらせ
作詞:高橋一也 - – M –
作詞・作曲:成田昭次 - GIMME A BREAK
作詞・作曲:成田昭次 - RESISTANCE
作詞:大津あきら
音楽性および制作
音楽スタイルとジャンル
本作の音楽性は、ロックとポップスを基盤とし、特にハードロック、ソフトロック、ポップロック、J-Rockといった要素を含む多様なロックサウンドを展開している 。リリース当時の音楽メディア(CDジャーナル)のレビューでは、「ますます、ボン・ジョヴィ化の進む男闘呼組の2枚目1」と評され、当時の米国のメインストリーム・ハードロック、特にアリーナ・ロック的なサウンドへの接近が指摘されている 。これは、より洗練され、大衆的なアピールを持つロックサウンドへの志向を示している。
一方で、同レビューは「オモチャみたいなロック。切実さが全然なさそうなところが、彼らの最大の魅力でしょう2」ともコメントしている 。この評価は、彼らがアイドルグループ出身であるという背景や、当時の他のロックバンドと比較した場合の perceived な「軽さ」を指している可能性がある。しかし、それは同時に、過剰なシリアスさや重苦しさとは異なる、彼ら独自の魅力、すなわちJ-Pop/アイドルとしての出自とロックサウンドの融合が持つユニークなポップ感覚を肯定的に捉えた見方とも解釈できる。レビュー内では「シリアスな熱血作品が並ぶ」とも言及されており 、楽曲自体には情熱的な側面も含まれていることがうかがえる。後年のファンレビューにおいても、楽曲の質の高さや時代を経ても色褪せない魅力が評価されている 。
歌詞のテーマ
本作の歌詞は、単なる恋愛歌にとどまらず、多様なテーマを扱っている点が注目される。特にCDジャーナルのレビューで言及されたのは、トラック4「YO-YO」とトラック7「赤ちょうちんでくらせ」である 。
「YO-YO」(作詞:高橋一也)は、オゾン層破壊という環境問題をテーマにしており3、当時のアイドル・ポップスの枠組みでは珍しい題材選択であった 。
「赤ちょうちんでくらせ」(作詞:高橋一也)は、レビューで「ブルーカラー(!?)の悲哀」と表現され、労働者階級のやるせなさや社会へのフラストレーションを描いている 。ファンからは、高橋による「先立つものがねぇとねじ伏せられちまうのか」「力あってもコネがねぇとシカトされんのか」といった生々しい歌詞が、従来のアイドル像とは一線を画すものとして高く評価されている 。この曲は高橋と成田のツインボーカルがフィーチャーされている 。
これらに加え、岡本健一が作詞した「熱くささやかな叫び」(トラック2)、前田耕陽が作詞した「FOREVER」(トラック5)など、メンバー自身が手掛けた歌詞も収録されており 、バンドとしての表現の幅を広げている。こうした歌詞の多様性は、単にロックサウンドを取り入れるだけでなく、その精神性やテーマ性においても、従来のアイドルグループの枠を超えようとする意志の表れと見ることができる。
作曲と編曲
アルバム全体のサウンドプロダクションにおいて中心的な役割を果たしたのは、Mark Davis名義の馬飼野康二である。彼は全10曲の編曲に加え、メンバー作曲の2曲を除く8曲の作曲を担当した 。これにより、アルバム全体を通して統一感のあるプロフェッショナルなサウンドが構築されている。
一方で、メンバーによる自作曲も収録されている点が重要である。成田昭次は「-M-」(トラック8)と「GIMME A BREAK」(トラック9)の2曲で、作詞・作曲の両方を手掛けた 。これは、バンドが単に外部の作家から楽曲提供を受けるだけでなく、メンバー自身の音楽的アイデアや個性を作品に反映させる段階に進んでいたことを示している。
このように、本作の制作体制は、経験豊富なプロデューサー(馬飼野)による安定した基盤作りと、メンバー自身のクリエイティビティの発揮という、ハイブリッドなアプローチを採用していた。これは、アイドルグループがアーティストとして成長し、自己表現を深めていく過程の一つのモデルと言えるだろう。ギター、ベース、キーボード、そしてボーカルというバンド編成 を活かしたアレンジメントが、これらの楽曲の魅力を引き出している。
後年の活動との関連
本作に参加したメンバー(成田昭次、高橋一也、岡本健一、前田耕陽)は、男闘呼組の活動休止後、時を経て再集結し、Rockon Social Club といったバンド・ユニットを結成し、音楽活動を継続している 。『男闘呼組 二枚目』に収録された楽曲の中には、これらの後年の活動と関連を持つものがある。
「GIMME A BREAK」(作詞・作曲:成田昭次):成田が自身のバンド NARITA THOMAS SIMPSON のライブでこの曲を演奏しており、彼にとって思い入れの深い楽曲であることがうかがえる 。
「FOREVER」(作詞:前田耕陽):男闘呼組の解散時(2023年)のラストツアー『LAST FOREVER』において、この楽曲が重要な意味合いを持って演奏されたことが示唆されている。アルバムタイトルにも含まれる “FOREVER” という言葉と、前田による歌詞が相まって、バンドの歴史の中で特別な位置を占める曲となった4。
これらの楽曲、特にメンバー自身が作詞・作曲に関わったものが、数十年後も演奏されたり語られたりしている事実は、本作がバンドの音楽的成長を示すだけでなく、メンバー個々のアーティストとしての軌跡においても重要な作品であることを物語っている。
脚注・出典
- 男闘呼組二枚目 : 男闘呼組 | HMV&BOOKS online – R32H-1081 ↩︎
- 男闘呼組二枚目 : 男闘呼組 | HMV&BOOKS online – R32H-1081 ↩︎
- FOREVER 男闘呼組!ラストの武道館&野音で聴いたアノ5曲! | エンタメOVO(オーヴォ) ↩︎
- FOREVER 男闘呼組!ラストの武道館&野音で聴いたアノ5曲! | エンタメOVO(オーヴォ) ↩︎